ただしアクティブロースターから絶対に外せないのはリスクが高すぎるため、ルール5ドラフト指名選手でもウェーバー公示を経てロースター外とすることは可能。もちろんこれは他球団に獲得されるリスクを負うことになる(移籍が発生した場合は新所属球団がロースター登録の義務も引き継ぐ)。なお獲得申し込みがなかった場合、その選手は基本的に旧所属球団へ返還される(返還を望まない場合は現所属球団へ完全譲渡の上にマイナー降格もあり得る)。

 ちなみにリスクと書いたが、これは球団側から見た場合の話。選手にとっては1年間はロースター入りが保証されるチャンスが与えられるわけで、飼い殺しからの脱却にはまたとない好機であるのは間違いない。

 一方の現役ドラフトはどうか。こちらは全12球団が強制参加と定められている。各球団は最低1人は他球団の選手を指名し、同様に最低1人は指名されなければならない。指名順は希望球団数が最も多い選手を提出した球団からスタートする仕組みで、例えば巨人阪神の選手Aを指名すれば、次の指名権は阪神が得る。阪神がソフトバンクの選手Bを指名すれば次はソフトバンクが……と繰り返し、最終的に11番目の指名順となった球団は自動的に12番目の球団の選手を指名することになる。

 これはつまり他球団に有望な選手を取られたくないからと微妙な選手しかリストアップしなければ必然的に指名順が下がっていき、あげくの果てには現有選手よりも魅力のない選手を強制的に獲得させられるということだ。提出リストによる指名順に戦略性を持たせたのは面白いが、損を回避する手段がない(MLBのようにリスクがあるから指名しないという手が取れない)のは将来的に問題視されてくるかもしれない。

 また、NPBが公表した現役ドラフトの制度規定を見る限りでは、移籍後の処遇に関する項目は見当たらない。MLBのルール5ドラフトでの強制ロースター入りのような規定がないのであれば、この現役ドラフトで移籍した選手は新天地でも変わらず二軍以下で飼い殺しの状況となることを避けられる保証がないということになる。

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現役ドラフトの成功例は生まれるのか