MLBのルール5ドラフトでは40人枠がいわゆるプロテクト枠として機能するため、各球団はドラフト前に指名されたくない選手を40人枠に入れるのが常套手段だ。若手有望株トップ100などにランクインするような選手がドラフト対象となる場合はほぼ例外なくこの段階でロースター入りすることになる。それはつまり来季のメジャー出場の可能性が高まることを意味していると言っていい。ルール5ドラフトで指名されずとも飼い殺しを減らせるように機能しているのだ。

 対してNPBの現役ドラフトに明確なプロテクト枠はないが、ここで問題となるのが「育成契約選手は対象外」とする項目だ。NPBの育成枠は支配下登録を目指す若手選手を確保するのが本来の趣旨だったが、現状では故障などで来季の長期離脱が確実な選手をいったん戦力外通告したうえで育成契約を結びなおすケースが多発している。

 これは国内フリーエージェントを獲得した際の人的補償も回避可能な制度の抜け穴として以前から問題視されていたが、これを応用すれば現役ドラフト対象となるが手放したくない選手を一時的に育成枠に移し、ドラフト後に支配下登録しなおすという「疑似プロテクト」が可能となるのだ。今後も現役ドラフトを本来の趣旨どおりに続けたいならば、この育成枠問題は早急に改善しなければならないだろう。

【指名強制および指名後の処遇】

 ルール5ドラフトと現役ドラフトの最大の相違点がこれだ。ルール5ドラフトは全球団が必ず誰かを指名するという制度ではない。欲しい選手がいなければ指名せずにドラフト不参加で構わない。実際、例年のルール5ドラフトでは10~20球団が指名するにとどまっている。なぜならルール5ドラフト指名にはあるリスクが伴っているからだ。

 それは、ルール5ドラフトで指名した選手は翌シーズンの全期間でMLBのアクティブロースターに登録し続けなければならないという規則。ただでさえMLBの試合に出場可能な選手が入るアクティブロースターは基本的に26人(9月以降は28人)と少ないため、その内の1枠を実力未知数の新戦力に割くのは大きな賭けとなる。そのリスクと将来の才能開花の可能性を天秤にかけると、ルール5ドラフトに参加しない球団が半数近くになるというわけだ。

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「飼い殺し」を防ぐ目的は形骸化の恐れも