秋が深まり、かぜやインフルエンザが気になる季節がやってきました。新型コロナウイルス感染症の心配も、いまだ完全には払しょくできていません。こうした感染症は、免疫力を上げることで予防や重症化の防止につながります。秋冬を元気に過ごすためにも、日頃の体質改善で免疫力アップをめざしましょう。日本の漢方のルーツである中国の伝統医学「中医学」の専門家が【感染症の予防法と対処法】を紹介します。
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■そもそも「免疫力」って?
免疫は細菌やウイルスから身体を守る防御システムで、自然免疫と獲得免疫に分けられます。自然免疫は、体内に侵入した病原体に最初に対抗する仕組み。免疫細胞(マクロファージやナチュラルキラー細胞など)が病原体を攻撃し、身体を病気から守ります。一方、感染した病原体を記憶し、もう一度同じ病原体が侵入した際に効果的に封じ込める仕組みが獲得免疫です。
免疫力のほかにも、身体を守る仕組みはいろいろあります。例えば、咳やくしゃみで異物や病原体を排除したり、鼻水で気道の粘膜を病原体から守ったり。また、気道から入った病原体は胃液によって殺菌され、皮膚の常在菌にも感染を防ぐ働きがあります。
■中医学では「衛気(えき)」の充実がカギ
こうした免疫力や身体を守る働きを、中医学では「衛気」と考えます。衛気は病気から身体を守るエネルギーで、体表(皮膚や鼻・のどの粘膜)に張り巡らされたバリアのような存在。また、衛気には身体を温める作用があり、これが免疫力アップにもつながります。
このように、衛気が充実していれば身体の免疫力・抵抗力が強くなり、感染症にかかりにくい体質に。また、病気になっても回復しやすく、重症化の予防にもつながるのです。
■ウイルスに負けない! 感染症の予防と対処
中医学は「未病先防(みびょうせんぼう:不調が起こる前の対処)」が基本。日頃の体質改善で「衛気(えき)」の充実した強い身体を保ち、不調が現れたら早めの対処で悪化を防ぎましょう。
■予防編 「衛気」の充実で免疫力アップ
【予防・その1】「肺」を強くする
「肺」は「衛気」の源となる「気(エネルギー)」の生成と深く関わる臓器。また、邪気(ウイルスなど)の侵入経路となる鼻やのど、皮膚の状態とも密接に関係しています。そのため、肺の機能が弱いと衛気も不足しがちで、邪気の侵入も受けやすくなるのです。気になる症状がある人は、乾燥に弱い肺の潤いを守り、身体を温めることを心がけましょう。
<こんな症状に注意>
息切れ、汗をかきやすい、かぜを引きやすい、咳、喘息、声が弱々しい、顔色が白い、冷え、舌がはれぼったく大きい
<食の養生>
体表を防御する肺の気を補う食材を積極的にとりましょう。
白きくらげ、白ごま、きのこ類、ゆり根、豚足、鶏手羽、葛、大根、蜂蜜、ヨーグルトなど
【予防・その2】「脾胃(ひい)」を整える
「脾胃(胃腸)」は飲食物の栄養から「気」を生み出す臓器で、「肺」を助ける働きも担っています。そのため、脾胃が弱くなると肺の働きにも影響し、結果「衛気」を十分に養えず、感染症にかかるリスクも高くなることに。
脾胃は冷えに弱いので、飲食物は温かいものを。元気な脾胃でしっかり栄養を取り、気を十分養いましょう。
<こんな症状に注意>
疲労倦怠感、食欲不振、お腹の張り、胃痛、腹痛、胃のムカつき、顔色が黄色い、冷え、軟便、舌苔(ぜったい)が白くベタつく
<食の養生>
消化の良い食材で胃腸の働きを整えて。
大豆製品、白米、豚肉、鯛、山芋、かぼちゃ、しそ、しょうが、山椒の実、みかんの皮、八角など