送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者

 安倍晋三元首相が銃撃された事件で、逮捕された山上徹也容疑者は警察の調べに対し、特定の宗教団体名をあげて、「母親が入信し、多額の寄付をして家庭が崩壊した。恨みがあった」などと供述しているという。その母親と同じ宗教団体にいて、布教活動なども一緒にしたという女性がAERA dot.の取材に応じ、当時の母親の様子などを語った。

【写真】山上徹也容疑者の高校時代

 一方、7月11日、宗教法人「世界平和統一家庭連合」(旧・世界基督教統一神霊協会=統一教会)が東京都内で記者会見し、山上容疑者の母親が入信していたことを認めた。

 *  *  *

 25年以上前から、奈良県で旧統一教会員だった女性のAさん。当時は旧統一教会の霊感商法が問題になっており、Aさんもつぼや数珠、多宝塔の販売にかかわっていたという。現在は脱会している。

―山上容疑者やそのお母さんのことは知っていますか。

「同じ教会で活動していましたから、お母さんは知っています。時々、子どもさんも連れていました。それが山上容疑者かどうかは記憶はありませんが」

―母親はいつごろ、どのように勧誘されたのでしょうか。

「今から25年くらい前でしょうかね、統一教会に入ったのは。同じ地域の信者がお母さんの心配ごと、悩みを聞くようになったようです。山上容疑者の父親や祖母は比較的、早くにお亡くなりになられてました。祖父も病気がち。当時、統一教会の信者は、相談に乗るといいながら、先祖の話を出して商品を買わせる手法でした。例えば『ご先祖様が苦しんでいるので助けなければいけない。そうすれば、あなたも救われる』というようなことを何度も伝えて刷り込ませる。家系図を書かせて全容を把握して財産も聞き出す。私が(山上容疑者の)お母さんを知った時はすっかり“洗脳”されていました」

―山上容疑者は警察の調べに対し、「母親が統一教会に多額の寄付をして生活に困った」「統一教会のせいで家庭がむちゃくちゃになった」などと供述しているようですが、思い当たることはありますか。

「統一教会がとてもお金がかかる教団であることは、これまでマスコミなどで報じられてきた通りです。私も1千万円以上、つぎ込まされました。山上容疑者のお母さんのお宅は、もともとお金持ちという印象でした。大きな家にお住まいでしたから。お母さんの実の父、山上容疑者のおじいちゃんが亡くなって、遺産を相続したようです。家と経営していた会社です。それも20年以上前だと思います。それを、1年もしない間に売却して、小さなアパートに引っ越しました。近くに統一教会の施設があるという理由です」

 *  *  *

高校時代の山上徹也容疑者=卒業アルバムから.
高校時代の山上徹也容疑者=卒業アルバムから.

 そこで、山上容疑者の母親の家や祖父の会社について調べると、家は奈良市南部に位置し、近くには大きな古墳がある古都奈良らしい住宅街にあった。もともと山上容疑者の祖父母の住まいだったが、その後、母親やきょうだいと一緒に住んでいた。

 不動産登記簿によれば、土地面積が約240平方メートル、建物は2階建て140平方メートル。1998年10月に山上容疑者の母親が祖父から遺産相続し、翌99年6月に売却している。会社は、奈良と大阪を結ぶ幹線道路に面する好条件の場所にあった。登記簿では、土地面積が230平方メートル。98年10月に山上容疑者の母親が祖父から相続し、99年3月に売却している。

 山上容疑者の母親は祖父から相続すると、家と会社の土地を約半年~8カ月という短い期間で売り払っている。路線価や当時の実勢価格と照らし合わせると、土地のみで約6千万円の評価額とみられる。そして、山上容疑者の母親は2002年12月10日、破産免責決定がなされた。

 *  *  *

―山上容疑者の母親は資産を手にして、すぐに売って現金化しています。旧統一教会との関連はあると思いますか。

「私は(山上容疑者の)お母さんから、統一教会から現金化を勧められて売却し寄付した、という趣旨の話を聞いた覚えがあります。具体的な金額はわかりませんが、数千万円だったはずです。その前には山上容疑者の祖父が亡くなり、保険金も寄付させられたはず。そんな大きな金額の寄付は、奈良ではそうはありませんでしたから、今も記憶に残っています」

次のページ
遺産相続した家や会社は8カ月ですべて売却] --}{!-- pagebreak[PM