グラウンド内外で今やチームに欠かせない存在となっているヤクルト・田口麗斗(写真提供・東京ヤクルトスワローズ)
グラウンド内外で今やチームに欠かせない存在となっているヤクルト・田口麗斗(写真提供・東京ヤクルトスワローズ)

 まだ6月というのに優勝へのマジックナンバー点灯が間近に迫るなど、歴史的な勢いでセ・リーグの首位を独走するヤクルト。その躍進を支える投手陣、特にブルペン陣にあって“切り札”的な活躍を見せているのが、巨人から移籍して2年目のサウスポー、田口麗斗(26歳)だ。

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 巨人時代は2016年から2年連続2ケタ勝利、2019年には14ホールドを挙げるなど、先発もリリーフもこなしてきた田口は、昨年3月のトレードでヤクルトに移籍。開幕第2戦の先発マウンドを任されるなど、9月初旬まで17試合に先発して4勝8敗、防御率4.11を記録すると、その後はリリーフに回って16試合で1勝1敗4ホールド、防御率3.46の成績を残した。

 日本シリーズでも3試合に登板して無失点とチームの日本一にも貢献したのだが、そこまで“無双”していたわけではない。ところが今シーズンはここまですべて救援で25試合に登板して自責点はゼロ(1失点)。チームでも唯一、防御率0.00をキープしている。

 ただし、この数字だけではそのスゴさを測ることはできない。それは今季の田口が、ピンチの場面になると颯爽と現れ、鮮やかに火を消していくという、いわばジョーカー的な存在となっているからだ。実際、今シーズンの田口は25試合のうち、13試合までがイニング途中での登板。その中の11試合は走者を置いてのマウンドである。

 圧巻だったのは、今季のセ・パ交流戦初戦となった5月24日の日本ハム戦(神宮)。1対1の同点のまま延長戦に入ったこの試合、田口は10回表、無死満塁の場面で登板すると、まずは4番の清宮幸太郎を空振り三振に仕留める。

 続く5番・万波中正に対しては、2-2から外角いっぱいに決まったかに見えたバックドアのスライダーに球審の右手は上がらず、フルカウントから万波が放ったライナーをショートの長岡秀樹がジャンプ一番グラブに収めてツーアウト。6番の宇佐美真吾には3-0と、もう1球もボールにできない状況からストレートを続けてフルカウントまで持っていき、最後もインハイのストレートで空振りを奪うと、打者に背を向けて雄たけびを上げながら、左手でガッツポーズをつくった。

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