高額年俸での複数年契約で移籍しながら、揃って2年目にしてほとんど出場できていないというのは、これまでのFA補強を見ても異例のことである。井納は二軍で結果(11試合に登板して防御率2.67)を残してようやく一軍に上がってきたものの、積極的に若手を抜擢している投手陣の中ではチャンスは限られている。また梶谷は前述した通り長期離脱となっており、来年で34歳という年齢を考えるとこちらもレギュラー獲得は簡単ではない。このまま2人とも結果を残せずに引退、退団となれば過去のFA補強の中でも最大の失敗と言われても仕方がないだろう。

 今後注目が集まるのが来年以降のこの2人の処遇である。井納については2年契約のためオフに契約内容を見直す可能性は高いが、さらに苦しい立場となるのが4年総額8億円という大型契約を結んでいる梶谷だ。DeNAの最終年となった一昨年こそ140安打、キャリアハイとなる打率.323をマークしているが、それ以前の2年間は故障で大半を二軍で過ごしており、巨人移籍1年目の昨シーズンもわずか61試合の出場にとどまっている。今回手術した箇所もプレーに影響を与える膝であり、来年で34歳という年齢を考えると復活への道は決して平坦なものではないだろう。焦りはもちろん禁物だが、今年中にある程度来年もプレーできるというところを見せる必要はありそうだ。

 そしてこの2人の存在によって影響が出てきそうなのが、これからの巨人の補強戦略である。昨年オフに原辰徳監督が新たに3年契約を結んだ時にチームを作り直すと宣言しているが、梶谷と井納の補強が失敗に終わった場合、ピークを過ぎたベテラン選手に多額の投資をしてFAで獲得することは効果が薄いという結論を出すことも十分に考えられるのだ。そもそも梶谷、井納の2人についてはチームの補強ポイントにマッチしていたわけではなく、『FA宣言したら獲得に動く』という巨人の伝統に縛られていた感は否めない。

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今後はFA補強なくなる?