新潟時代の酒井高徳
新潟時代の酒井高徳

 Jリーグが掲げた重要な基本理念である「地域密着」は、発足から30年が経過した中で着実に根付いてきた。その中の事象の一つに、保有が義務化されている下部組織の存在がある。2019年からは「ホームグロウン制度」が導入され、これまで以上に「育成力」が問われる中、各クラブはこれまでどのような選手を輩出してきたのか。J1在籍10年以上の24クラブを対象に“ユース最高傑作”を選出し、全3回に分けて発表したい。今回は中編。

【写真】近い将来、海外に移籍しそうな若手選手

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■東京V:森本貴幸

 1988年5月7日、神奈川県生まれ。元祖“怪物”FW。ジュニアユース在籍時の2004年に15歳10カ月6日の史上最年少(当時)でJデビューを果たし、15歳11カ月28日で決めた当時の最年少ゴールを含む4得点をマークして最優秀新人賞を受賞。中学生がドリブルでプロを圧倒するシーンは今でも語り草で、ボールを持った際の推進力は“和製ロナウド”と呼ぶに相応しかった。その後、2006年夏に18歳でカターニア(イタリア)へ移籍し、2008-09シーズンには7ゴールを記録。しかし、その後は不振に陥り、膝を手術した影響もあってパフォーマンスが低下。日本代表でも通算10試合出場3得点と期待されたような活躍はできなかったが、能力的に“最高傑作”であったことは間違いない。読売クラブ時代からテクニックに優れた“天才少年”を次々と生み出した名門ヴェルディユース。平本一樹や河野広貴に高木三兄弟、そして中島翔哉といったタレントを輩出したが、そのすべてを森本のデビュー時のインパクトが勝っている。

■川崎:三笘薫

 1997年5月20日、神奈川県生まれ。小学3年時に川崎の下部組織に入団し、U-15、U-18で鍛錬を重ねた後、筑波大でさらに研鑽し、2020年に川崎へ正式“帰還”。1年目から独特の“ヌルヌル”ドリブルで好機を作り出しながら、自ら13得点を挙げる活躍を見せ、チームの2冠達成に大きく貢献。自身もベストイレブンに選出された。2年目の2021年も無双ぶりを続け、東京五輪後の8月に海外移籍を果たし、レンタル先(所属はプレミアリーグのブライトン)であるサン=ジロワーズ(ベルギー)でも実力を証明。そして2021年11月にA代表に初選出されると、カタールW杯アジア最終予選では「救世主」と言える活躍を披露した。風間八宏イズムが浸透した川崎の下部組織からは近年、優秀な選手が次々と生まれ、三好康児、板倉滉、田中碧に続き、宮代大聖、宮城天とタレント揃い。だが、その中でも三笘は別格。今後も自らのプレーで自身が“最高傑作”であることを証明し、多くの驚きと喜びを我々に届けてくれるはずだ。

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