イラスト/寺平京子(週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より)
イラスト/寺平京子(週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より)

「たとえば前立腺がんの場合、3次元原体照射では近接する直腸や膀胱を避けて照射するのが難しかったのですが、複雑な線量分布を描けるIMRTであれば、前立腺だけにしっかりとかけることができる。直腸炎などの合併症は格段に減りました。口の中や唾液腺などに放射線をあてたくない頭頸部がんでも、IMRTは有力な治療手段になっています」(秋元医師)

 ほかにも脳腫瘍、肺がん、乳がん、子宮がん、食道がん、直腸がんなど、数多くのがんに用いられている。

週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

 IMRTと双璧をなす高精度放射線治療が、「定位放射線照射(SRI)」だ。限局した小さながんに高線量を集める方法で「ピンポイント照射」とも呼ばれている。正常臓器を避けながら、1回に通常照射の6~10倍の線量をあてることができるため、根治性が高く治療期間も短く済む。

 定位放射線照射は70年代から脳病変専用のガンマナイフが効果を挙げてきた実績があり、肺がんに応用する「体幹部定位放射線治療(SBRT」が登場した。現在は早期の肺がんだけでなく、肝がん、前立腺がん、腎がんなどの治療にも用いられるようになり、早期の肺がんや肝がんでは手術に近い治療成績を挙げている。

イラスト/寺平京子(週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より
イラスト/寺平京子(週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

 IMRTやSBRTのような高精度放射線治療を実行する上で欠かせないのが、「画像誘導放射線治療(IGRT)」という位置合わせの技術だ。放射線治療では、事前に緻密な治療計画を立てて、照射位置や線量などを決めておくが、治療時には内臓の充満度や呼吸に伴う動きなどによって、がんの病巣が計画した位置から微妙にずれてしまう。そこで、治療直前や治療中に得られる画像情報などをもとに、日々の放射線治療時の位置誤差を補正する。IGRTには、体内に留置した小さな金属マーカーの位置をX線透視で確認する方法や、放射線治療機に併設されたCTで、治療直前の病巣の位置を確認するなど、さまざまな方法が採用されている。

週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

■陽子線や重粒子線による粒子線治療も近年浸透

 IMRTやSBRTも含め通常の外部照射には主にX線という放射線が使われているが、近年は陽子線や重粒子線といった「粒子線治療」も浸透しつつある。

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合併症の少ない治療ができる粒子線治療