X線はからだ表面に最も強くあたって減弱していくのに対し、放射線の粒子が重い粒子線は、一定の深さまで進んでから一気にエネルギーを放出し、そこでほぼ止まる。つまりがんにはしっかり放射線が届く一方で、その手前や奥側の正常組織にはほとんどあたることはなく、合併症の少ない治療ができる。現段階では前立腺がんや頭頸部がん、骨軟部腫瘍の一部、小児がんに保険が適用され、22年4月から肝がん、肝がん、膵がん大腸がんの術後再発、子宮頸部腺がんも条件付きで保険適用となる見込みだ。

「前立腺がんでIMRTとの差があるかどうかは、現在臨床研究中です。粒子線治療の役割が大きいのは、治療による肝機能の悪化を抑えたい肝がんや、X線が効きにくい肉腫や膵がん、放射線の影響を極力避けたい子どものがんなどです」(櫻井医師)

 現在、重粒子線は7施設、陽子線は19施設で治療を受けることができる。

 内部照射にも目を向けてみよう。子宮頸がんの放射線治療では、子宮内に線源を入れておこなう腔内照射と外部照射の併用が不可欠だ。前立腺がんでは、がんの近くに線源を留置する「永久挿入密封小線源療法(LDR)」と、一時的に線源を入れて高線量を照射する「高線量率組織内照射(HDR)」が、放射線治療の選択肢になっている。頭頸部のがんや食道がんでも、内部照射がおこなわれることがある。しかしいずれも実施病院は少ない。日本放射線腫瘍学会ではホームページ上に実施病院を掲載しているので、参考にしてほしい。

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』では、全国の病院に調査を実施し、がん放射線治療の患者数などの実績を掲載しているので、こちらも参考にしてほしい。

(文/谷わこ)

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より