メジャーリーグの試合ではないが国際試合で起きた大乱闘の“影の主役”となったのがロッテ巨人楽天でプレーしたルイス・クルーズだ。結果的に7人が退場となる乱闘が起きたのは2013年3月9日、第3回WBCの1次ラウンドでのメキシコ対カナダ戦。カナダが9対3と6点リードで迎えた9回に先頭打者クリス・ロビンソンが三塁へのバントヒットで出塁したことが火種となった。

 メジャーでは大量リードしているチームがセーフティバントで出塁することはご法度。だが、この試合は得失点率が順位決定に絡む大会規定もあり、1点でも多く得点したいカナダの作戦自体は責められるようなものではなかった。しかし、この試合で母国メキシコ代表の三塁手としてプレーしていたクルーズはバントで転がったボールを捕球した後、メキシコ代表の5番手として登板していたアーノルド・レオンに「次の打者に当てろ」と報復死球を指示するようなジェスチャーを見せた。

 すると次打者のレーン・トソニに対し、レオンが威嚇とばかりに2球連続で内角を突くと不穏な空気が球場を包み込む。球審がすかさず両チームに警告を与えたが、次の3球目がトソニの背中にヒット。両ベンチから選手が飛び出し、互いにパンチが飛び交う激しい大乱闘となった。試合後メキシコ代表のリック・レンテリア監督は「WBCのルールと野球の不文律の食い違いが乱闘の原因となった」と国際試合とメジャーリーグでの試合の認識の違いに戸惑っていたが、あからさまに「相手に当てろ」というジェスチャーはメジャーリーグの試合でも中々見られる光景ではない。国と国との戦いで侮辱されたという認識がクルーズにはあったのかもしれない。

 このように来日前の助っ人たちがメジャーリーグ時代などに日本時代とは違う顔を見せていることもよくある。過去に遡って助っ人たちのメジャー時代などの振舞いを調べることで新たな発見があるかもしれない。