■枕を高くする
敵の襲撃に備えて地面に耳をつけて寝た

中国の戦国時代に、張儀(ちょうぎ)という人物が魏の国の王に「秦の国に仕えれば、枕を高くして眠れる」と言ったという故事が『史記』にあります。常に敵襲に備えていた当時、兵士は地面に耳をつけたり、箙(えびら)という矢を入れる筒を枕代わりにしたりしていたそうです。そのため、枕を高くすることは敵に襲われる心配がないことであり、安心することの例えになりました。

■火中の栗を拾う
そそのかされて他人のために危険を冒す

17世紀に活躍したフランスの詩人ラ・フォンテーヌの寓話(ぐうわ)に由来します。猿におだてられたが、暖炉で焼かれている栗を火傷しながら取り出したものの、すべて猿に食べられてしまったという話です。そのため、「だまされて他人のために危険を冒す」というのが本来の意味ですが、今では「自ら進んで危険を冒す」という意味で広く浸透しています。

■白眉(はくび)
眉に白い毛のある長男が最も優秀だった

「同類の中で最も傑出した人や物」という意味ですが、「白い眉」がなぜそのような意味になるのでしょうか。この言葉は、『三国志』の中の「蜀志」にある「馬良伝(ばりょうでん)」の故事が元になっています。それによると、蜀の馬氏には才能豊かな五人の兄弟がいて、なかでも眉に白い毛のある長男が最も優秀だったそうです。そこから、現在の意味になったのです。

監修/久保裕之(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)
文/美和企画
※『みんなの漢字』2021年3月号から