妻と、その中国人の親子と、お互いに写真を見せ合って、「大黄」=「ニャジラ」ということを確認したあと、彼女たちはこう言ったそうです。

「大黄のような立派なボスが、死ぬわけないって信じていた。きっと誰かが保護しているって信じていた。だけど、それが日本人とは思わなかった」と。

 中国語で野良のことを、流浪猫(りょうらんまお)と呼ぶのですが、日本と違って、中国では野良の成猫をひきとる習慣があまりないようです。だから私たちがニャジラを家に迎えたことに対し、「おとなの猫を飼うのですか?」と驚いてもいました。

 私たちはその出会いを機に、ニャジラの情報を交換するだけでなく、アパート内の野良猫の保護活動を“共に”するようになりました。

誰か猫好きさんが設置しくれたシェルター(提供)
誰か猫好きさんが設置しくれたシェルター(提供)

 たとえば、TNR(捕獲、避妊去勢、リリース)活動のほか、病気や怪我をした猫を病院に連れて行き、里親探しなどを積極的に行っています。先週も2匹の猫を里親さんの元に届けました。近々、別の1匹をお届けする予定です。

 WeChatのグループチャット機能を使いながら、地域猫の健康状態、餌やり状況、里親募集の打ち合わせ、里子のフォローアップなども行っています。

 そんな私たち夫妻に対し、今ではすっかり“保護活動仲間”となった先の中国人女性が、こんなことを言ってくれたのです。

「私たち人間が猫の世話をしていると思われるけど、猫が人間の関係を良くして繋いでいるよね。ニャジラが日中友好の懸け橋になっているよ」

 今回ロックダウンして、アパート内で数人が集まっている時にも、「中国人でも猫をときどきかわいがる人はいるけど、あんなふうに継続してかわいがる人は今まで見たことがない。中国にもいい人がいるように、日本にもいい人はいる」と話していたと、妻から聞きました。

 中国での動物愛護に関する法律は、日本ほど厳密な決まりがなく、情報も乏しいようです。猫をいじめたり、猫が食べないフライドチキンやチンジャオロースや火鍋、小籠包も外に置いたりしています。猫とどのように接するのがいいのか、糞尿や食べ残しの始末をどうするか、どうやって遊ぶか、皆が勉強していく過程にあるのだと思います。

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ニャジラの最近の様子は?