家で甘えるニャジラ。外では見せない表情をしだす(提供)
家で甘えるニャジラ。外では見せない表情をしだす(提供)

 飼い主さんの目線でのストーリーを紡ぐ連載「猫をたずねて三千里」。今回お話を聞かせてくれたのは、上海の医療機関に勤めている50代の医師、コダマさん。自宅アパートに隣接する公園に暮らすボス猫と心を通わせ、怪我(食欲不振)を機に家に迎えました。治療をして穏やかな日が訪れますが、新たな病が判明……。前編から「ニャジラ」の物語は続きます。

【写真】入院中のニャジラ。ガラス越しに体を寄せてきて…がんばれ!!

>>【前編:コロナ禍の上海で出会った手負いのボス猫を家猫に 「幸せにしたい!」日本人夫婦の願い】から続く

<これまでの概要>
 コダマさん夫婦が出会った地域のボス猫。ひときわ体が大きく落ち着いた、ふてぶてしい茶白柄の猫で、誰が見ても“一番偉いな”とわかるような佇まい。その一方で、妙に愛嬌があり憎めない性格をしている。コダマさんはすぐに虜になり、「ニャジラ」と名付けました。ニャジラはプライドが高く、甘える仕草を見せるものの、ボスとしての威厳のある態度をとっていたのです。ところがある日、コダマさんはけがを負って食欲も落ち、疲れ果てたニャジラの姿を目にしました。「幸せになってほしい」と夫婦はニャジラを家猫として迎えました。しかし、ようやく落ち着いてほっとしたのも束の間、ニャジラの体に異変が起きました。

*    *  *
 まず、目やにが増えました。私たちが目やにの除去をしようとしても絶対に顔を触らせてくれず、どうしようも無くなりました。同時期から食事量も減少し、体調不良が気になるようになりました。

 ニャジラは、猫エイズのキャリアでした。ですから発症したのではないか、と気が気でありませんでした。そこで、動物病院で目薬や口のスプレーを処方してもらい、自宅での投与を試みましたが全く投与はできませんでした。

 そのため、入院による治療を選択せざるを得ませんでした。

 入院時の診察で、口内炎・歯肉炎がひどいため、犬歯を除く全抜歯を勧められ、全身麻酔で手術を受けました。

 しかし、術後に口腔内の状態が改善しても、食欲の戻りは今ひとつでした。入院生活によるストレスを考えて、早期退院に踏み切りましたが、帰宅後も食事はほとんど手を付けないようになり、獣医さんと相談して、強制給餌を行うことになりました。

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水野マルコ

水野マルコ

水野マルコ/1961年生まれ。ライター。猫と暮らして30年。今は優しいおばあちゃん猫と甘えん坊な男子猫と暮らしています。猫雑誌、一般誌、Web等での取材歴25年。猫と家族の絆を記すのが好き。猫と暮らせるグループホームを開くのが夢。

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