NHKのスタッフは全員初対面の方々。

 飯島さんが会議が始まる時に「GO」というような合図を出した気がした。この「GO」という空気。「おもしろいものを考えてね」「暴れなさい」という空気。初めてフジテレビのスマスマのプロデユーサーに会わせてもらったときの無言のプレッシャー。そんな感じ。

 久々である。

 番組の方向性がまだ全然決まってない中、「子供番組」というパッケージで、どんなものを作っていくか考えていく。

 僕は久々に自由にプレイヤーをやらせてもらう気持ちになった。Eテレだから違和感のあること。Eテレだからできることを考える。僕もスタッフさんも、自由に発想していく。

 制約があってそこでおもしろいものを考えることが多い中、自由は不安だがやはり作り甲斐がある。

 子供を記者にして、大人の記者会見を開く企画をやりたいです!と言い、そこに座ったら一番違和感のある人をと考え、元週刊文春の編集長である文藝春秋社の新谷学さんに出ていただくことになった。

 新谷さんに子供記者たちが素朴なことを聞きまくる。新谷さんが子供たちに真剣に向き合って言葉を伝える姿に胸が熱くなったりして。

 想像を超えたものが作られていく。

 稲垣吾郎が絵本を読む「芸能界むかしばなし」。桃太郎、金太郎、浦島太郎、ここで紹介するのは勝新太郎。勝新太郎の豪快伝説を昔話風に紹介する。話は勝新太郎なのに、絵の雰囲気はEテレだ。ここでも想像を超えるものに仕上がる。

 NHKだから出来ること。慎吾ママと草なぎ剛演じる徳川慶喜の対談番組。大河ドラマが終わったならまだしも放送中に、徳川慶喜を背負ってこんなことをやる。NHKだからできること。

 NHKだから出来るキャスティング。人間国宝の人に出てもらえないのか?しかもそんな人に、「人間らしい」部分を聞いていけないのか?この秋に人間国宝になる人に本当に出てもらえた。これぞNHKだからできること。

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あの頃の気持ちでテレビに向かいあえた