海外でも自宅に酸素缶を備えている人がいるという(c)朝日新聞社
海外でも自宅に酸素缶を備えている人がいるという(c)朝日新聞社

 新型コロナウイルスで自宅療養している人が全国で9万6709人(8月18日時点)おり、東京都では、8月中に12人の自宅療養者が亡くなった(25日時点)。医療の逼迫により、速やかに入院ができない深刻な状況にある。その影響からか、スポーツや登山で呼吸を整える時に使う「酸素缶」を買い求める人が増えている。

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「『酸素缶』は、もともと登山やマラソンの時くらいしか使われていなかったので、製造自体が少なかったのですが、8月に入ってから5万本を出庫する勢いです。いま、弊社の在庫はほとんどありません」

このように話すのは、「酸素缶」を製造販売するVIGO MEDICAL株式会社(東京都中央区)の担当者だ。5月のゴールデンウィークあたりから注文が増えていたという。

「弊社以外にも『酸素缶』を製造販売する会社がありますので、それとの兼ね合いがあるのでしょうが、次に弊社に納品があるのは11月くらいだと製造工場から聞いています」(担当者)

 担当者によると、酸素を濃縮できる工場は少なく、設備も限られるため、需要増にすぐには対応できないのだという。

 酸素缶とは、携帯酸素や酸素スプレー、圧縮型酸素ボンベなどとも呼ばれ、多くは約5リットルの酸素が濃縮されてスプレー缶に詰められたもの。キャップ部分にあるマスクを口元に当て、シューっと酸素を出してそれを吸う仕組み。手軽に酸素を補給でき、酸素の薄い山の上などアウトドアやスポーツで利用されることが多い。

 酸素缶は医療用ではないとする商品も多い。しかし、酸素ボンベや酸素マスクのように医師の診断なく使用できるため、このコロナ禍でいざという時に自宅でできる応急処置として利用しようと購入する人が多いようだ。定価は商品によっては異なるが、自宅療養者が増えた現在、ネット上では“転売ヤー“によって定価の2、3倍もの値段で転売されている。

 医学的に「酸素缶」は有効なのだろうか。日本感染症学会の指導医でもある東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授(呼吸器内科)は、「その効果は極めて限定的」と話す。

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応急処置としては有効?