薬物療法や中耳加圧療法で改善しない場合は手術が検討される。メニエール病の手術には、たまった内リンパを排出させる手術、鼓膜の奥に薬物を注入する手術、めまいの原因となる前庭神経を切除する手術などがある。

「治療はまず薬物療法から始めます。一般的には8~9割の人が手術以外の保存療法で経過をみていくことになります」(同)

 治療によりめまい発作が治まった後にふらつきなどの症状が残る場合は、リハビリとしての理学療法がすすめられる。メニエール病に限らずめまい全般に有効とされ、目を動かさずに頭を動かす運動や、目を左右、上下に動かす運動などを、医師の指示に従っておこなう。

「目と耳は協働して、からだのバランスを保っています。運動により、バランスを保つ機能を強化することで、めまいの改善や予防につながることが期待できます」(同)

■中枢性めまいは随伴症状に注意

 脳の病気により起こる「中枢性めまい」は、頻度は少ないものの生命に関わる「危険なめまい」といえる。その原因となる病気が「脳卒中(脳出血・脳梗塞など)」だ。なかでも、めまいの症状がみられるのは小脳や脳幹で起こる脳卒中とされる。小脳や脳幹は、スムーズな運動やバランス維持に欠かせない部分で、障害されることでめまいが起こると考えられる。

 中枢性めまいを見分ける重要な特徴が、めまいと一緒に起こる「随伴症状」だ。中枢性めまいでは、急激に起こるめまいに加え、

・ものが二重に見える
・話すときにろれつが回らない
・片側の手足がしびれる

 などの症状がみられる。横浜市立脳卒中・神経脊椎センター副病院長で脳卒中・神経疾患部門長の城倉健医師は、こう話す。

「急にめまいが起こると誰でも不安になりますが、まずは落ち着いて上記のような症状がないか確認しましょう。なければ中枢性めまいの可能性は低いといえます。余裕があれば、そっと立ち上がってみましょう。末梢性めまいでは、目を見開いたり、足をふんばったりしてからだの感覚を総動員すれば、脳がめまいを代償するので、なんとか立てるものです。しかし中枢性めまいでは、脳が障害されるために代償がきかず、がんばっても立つことが難しくなります。随伴症状がひとつでもみられたら、一刻も早く救急車を呼んでください」

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