しかし、学生時代から怪我が多く、ドラフトを控えた大学4年春には高校時代に苦しんだ右肩痛が再発。同年夏には右足太もも裏の肉離れなど、相次ぐ故障に悩まされた。とはいえ、ドラフトでは5球団が田中を1位指名し、プロの評価は全く揺るがなかったのだが……。

「身体のケアだったりケガの予防という、20年間投げられる方法を教えていただきたいと思っています」(田中/16年11月22日の新人入団会見)

 田中は新入団の記者会見において、同席した工藤監督に聞きたいこととして、このような質問をした。高校時代から故障に苦しんだ経験もあるだろうが、新人選手が入団会見で故障に触れることは珍しい。その後のプロでのキャリアを暗示していたかのようでもあった。当時から不安を感じていたのか、それが現実となり入団直後から現在に至るまで故障との戦いが続いてきた。

 プロ入り後は、ルーキーイヤーの17年3月に右肩に違和感を感じ離脱するなど、そのシーズンは一軍での登板はゼロに終わった。翌18年には開幕直後に一軍デビューを果たし10試合に登板するも、7月に体調不良で戦列を離れ、その後のシーズンは一軍でのマウンドに上がることはなかった。それ以降の2年間も肩や肘を痛め、ここ2年間は一軍での登板がわずか1試合にとどまっていた。

「5球団競合での獲得だったので他球団も含め故障は問題ないと判断しての指名だったはず。ドラフト1位指名の選手がこれだけ故障するのは何か問題があるはず。編成や育成方針なのか、本人が無理をしたのか。根本的な部分を解決しないと、同じような選手が再び出る可能性もある。球団に対しても大きな問題提起をした感じがある。焦る気持ちを抑えながらリハビリを懸命にこなしていた。1日も早く一軍で活躍して欲しい」(ソフトバンク担当記者)

「大学時代を見ていたが素材は一級品なので、今頃はソフトバンクのエースでもおかしくなかった。ドラフト1位指名なので契約金など、経費もかかっている。簡単に育成契約にしたりトレードというわけにもいかない。当時、競合してクジが外れた球団の中には、今頃ホッとしているチームもあるのではないか。ソフトバンクは予算豊富とはいえ球団内で看過できない問題です」(在京球団編成担当)

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今年こそ期待に応えられるか?