ソフトバンク・田中正義 (c)朝日新聞社
ソフトバンク・田中正義 (c)朝日新聞社

 ソフトバンク・田中正義がマウンドに戻って来た。

 16年ドラフト1位の剛腕は昨年までの4年間で一軍登板わずか11試合。残された時間は多くない中、覚醒の可能性はあるのだろうか。

「自分が持っている力を全て出し切ろうと思って、マウンドに上がった。自分らしい投球ができ、最高の結果を出すことができたと思います」(田中/6月27日)

 大卒5年目となった田中が6月27日の楽天戦(楽天生命パーク)で今季初登板を果たした。試合終盤の8回、2対3と1点リードされ失点が許されない場面で4番手としてマウンドに上がった。150キロを超える真っ直ぐを中心に力強い投球で、1回11球を投げ無安打無失点、1奪三振に抑えた。

「コメント通り本人は手応えがあったのでしょう。また工藤公康監督など首脳陣の嬉しそうな表情が印象的だった。春季キャンプから調子は良さそうだったので、今年は戦力として期待も大きかった。故障者が出るなど投手陣が苦しい状況下、田中が出てくれば大きい。頭数が揃うだけでなく注目右腕の活躍はチームに勢いも生み出せます」(ソフトバンク関係者)

 日本シリーズ4連覇中のソフトバンクだが、交流戦で11位と低迷するなど、ここまで貯金なし(32勝32敗14分)の3位とまさかの苦戦を強いられている。特に投手陣は千賀滉大の故障や高橋礼の不調などベストな布陣で臨めず、例年のような絶対的な強さを感じない。また他球団の戦力を考えると安心はできない状況だ。毎年のように大型補強を敢行し、今年は田中将大が復帰した楽天、若手の成長が著しく交流戦では優勝を果たしたオリックス、そして強力な“山賊打線”誇る西武。強豪揃いのパ・リーグで息を抜けない戦いが続く中、田中に対する期待は大きい。

 これまでプロでは期待に応えられてはいないが、田中のポテンシャルは球界でもピカ一なのは間違いない。創価大時代には、2年春から公式戦のマウンドに上がり、3年の6月にはユニバーシアード日本代表の一員としてNPB選抜と対戦。岡本和真巨人)などから7者連続三振を奪った投球は見事としか言いようのないものだった。この時のNPB選抜は若手主体だったとはいえ、プロ相手にあれだけのピッチングをできるアマチュア投手はそうは出てこない。

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プロ入り後は怪我との戦いが続く