※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 医師は過酷な労働状況を強いられがちな職種ですが、それは結果的に患者さんへ提供する医療の質にも悪影響をもたらします。大学医学部は教授をトップとした組織で、教授の方針次第で医局員の働き方を向上させることも可能です。この4月に近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授に着任したばかりの大塚篤司医師が、医局の働き方改革に挑戦中です。

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 管理職になるにつれて、会議や出張など患者さんの診療とは直接関係のない仕事が増えてきます。

 病院という組織で働くには、病院の機能を守る必要があり、役割分担として管理職がやらなければならないこともあります。

 ただ、患者さんに向き合う時間が削られていくことには寂しさと申し訳なさがあります。

 一方で、教授になると医局のマネジメントを任されるわけですから、組織としての目標や方向性を決めることになり、結果として医療の質に反映されます。一人の患者さんに向き合う時間は減る分、多くの患者さんに影響を及ぼすことになります。

 今回は、4月に近畿大学医学部皮膚科学教室の主任教授に着任してから、私が取り組んでいる働き方改革について少しまとめたいと思います。皮膚科学教室には医局員が18人いて約8割が女性です。20代、30代の若い先生がほとんどで活気あふれる雰囲気だと思います。臨床をしながら研究を行っている先生もおり、熱量の高さをどう結果に結びつけるか、トップの力量が問われるところです。

1.教授総回診の少人数化

 以前の記事にも書きましたが、コロナ禍のいま、大人数で入院患者さんのもとを回るのは悪い点はあっても良い点は思いつきません。研修医の教育面においても、電子カルテやデジタル写真がある現在では十分対応可能だと感じています。

 4月以降、私と病棟医長、看護師長の3人で患者さんのもとを回っています。3人でも患者さんの情報は細かなところまで把握でき、診断の確認や治療の提案ができることがわかりました。十数人で廊下をゾロゾロ歩くのをやめてよかったと心から思っています。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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