2.医療情報のペーパーレス化

 4月に着任して気がついたのは、紙での回覧や報告が多いことでした。当直の報告書、新規薬剤の院内採用、皮膚病変の写真の台帳。これらはすべて紙で運用されており、必要な場合は手書きの情報をパソコンに入力し直すことを行っていました。手書きの問題点は保管と検索です。紙はかさばりますし、量が多くなればどこに何を書いていたかわからなくなります。写真の管理台帳は手書きをやめデジタル管理とし、紙の回覧はすべてメーリングリストに切り替えました。一方、医療情報をデジタル化する際に問題となるのはセキュリティーです。患者さんの個人情報が外部にもれたら大変なことになります。そこで院内のセキュリティーが確保されたサーバーを活用したうえで、個人情報は匿名化するように対策をとりました。

3. カンファレンスのWEB配信

 平日の9時から17時のコアタイムは外来や手術、病棟の仕事などまとまった時間をとるのは難しい状態です。だからといって、全てが終わってからカンファレンスをはじめるとなると、開始は17時以降となり終わる時間が夜遅くになってしまいます。育児中の医師は男性女性に関わらずお子さんのお迎えがあるわけで、夜遅くなるようであればカンファレンスには参加できません。そこで、外来枠や外勤の整理をしてカンファレンスを15時にスタートできるように仕事を調整しました。17時終了を目標に効率的にかつ議論すべきところはしっかり議論するカンファレンスを目指しています。

 あわせて、育児休暇中の医師も勉強できるようにカンファレンスのWEB配信を導入、開始しました。仕事を休んでいる間に全く勉強できないのは不安であり復帰の精神的妨げになります。自宅でも最新の治療が学べるように変更しました。

4. 治療内容の充実

 医師の働く環境を改善する最大の目的は、患者さんに提供する医療をできる限り質の良いものにするためです。働き方改革を進めるだけでは不完全で、医療の内容を充実させる必要があります。4月の着任後、まずは皮膚がんの免疫療法を皮膚科で行えるようにしました。私がこれまで蓄積してきたノウハウをまとめ、医局員と共有して安全に最先端の治療ができるようにしています。またアトピー性皮膚炎の治療、入院に関しても、系統立った教育プログラムを作成することで患者さんだけでなく、若い医師も一緒に学べるシステムを作成中です。そのほか、近畿大学皮膚科ならではの取り組みも準備中です。こちらはコロナのパンデミックが収束した後に、動かし始めたいと思います。

 以上、簡単ですがこれまでの取り組みをまとめてみました。ほかにも現在進行中の改革が多数あります。

 改革をしていく中で肝に銘じているのが、これまで医局で働く中で感じてきた理不尽やおかしさを自分の代で終わらせるということ。自分が苦労した部分はシステムとしてしっかりと変更し、その分、患者さんの診療を充実させることが必要だと思っています。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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