在りし日の神田川俊郎さん(提供)
在りし日の神田川俊郎さん(提供)
在りし日の神田川俊郎さん(提供)
在りし日の神田川俊郎さん(提供)

「すっかり元気になって戻ってくるものと思っていたので、今も信じられません」

【写真】「憎っくきコロナだよね」という言葉を残して亡くなったのはこの人

 こう語るのは、4月25日に新型コロナウイルスに感染し、亡くなった日本料理店「神田川」の料理人として知られる神田川俊郎さん(享年81)の次女、大竹可江さんだ。

 神田川さんは京都市出身で、16歳から料理人として修行に入り、「なだ万」などで腕を磨いた。大阪で高級日本料理店「神田川」など3店舗を経営。「新日本料理」と銘打った斬新な料理で繁盛し、人気テレビ番組「料理の鉄人」に「神田川軍団」として弟子らと出演した。道場六三郎、陳建一ら鉄人との名勝負で一躍、人気者になった。

 そんな神田川さんがなぜ、コロナに感染し、急死してしまったのだろうか。可江さんが亡くなるまでの詳細な様子を語った。神田川さんが体調を崩したのは、4月16日だった。

「朝、電話をかけてもつながらない。店で女将をやっている父の妹が自宅マンションを合鍵で開けたところ、風呂場で倒れていた。すぐに意識は戻ったのですが、救急搬送されました。大阪市内の病院でPCR検査を受けると、コロナに感染していることが判明し、入院しました」

 しかし、翌日17日には神田川さんから可江さんに電話が入った。

「父は元気な声で『なんでこんなところにおるねん。熱もないし、元気や』と言うので安心しました。その日は新作で考えていた料理の写真撮影をしたいと仕事関係の方など、あちこちに電話をかけまくっていたそうです。3月に料理の仕事で本へ出張までしていたので、すぐに回復すると信じていました」

 だが、18日になって容態が急変したという。神田川さんは血中酸素濃度が90%まで低下。

「19日になって病院から『酸素吸入、チューブを挿管します』という連絡がきてビックリしました。17日にはあれだけ元気だったのに、何があったのか、と心配でたまりませんでした。しかし、コロナ感染で面会はできないので様子を見に行くこともできません。また、父の店から3人、コロナウイルスに感染していることもわかりました。今まで以上に感染力が強く、重症化する確率が高い、コロナの変異株に感染したのかなとニュースなどを見ながら、心配していました。そして病院から『万が一のことがあるので、重症者対応ができる病院への転院を考えている』と聞かされ、本当に深刻な病状であることを痛感しました」

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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重篤になっても転院できず…