英会話教室や塾で英語を学んでいる中学生なら、もしかしたらとっくに知っている構文だったかもしれない。でも阿部さんは、市販のテキストだけを頼りに一人コツコツ勉強する中学生だった。それは英検のときだけではない。高校受験も大学受験も、塾や予備校に通うことなく自分の力だけで乗り越えてきた。

「大学受験直前に予備校の短期講座を受講しましたが、基本は通信教材と問題集です。ぼくの勉強時間は、舞台や撮影の待ち時間、控室の中、移動の途中……すき間時間が中心だったので、それが最適な方法でした」

 そうやって芸能活動と学生生活を両立させてきた阿部さんだが、英語に関しては小さな後悔がある。

「英語の小説や新聞など、長文をもっとたくさん読むべきでした。速読力がつくと受験でも高得点が狙えるし、生きた英語に触れる機会にもなったんじゃないかなと思うんです」

■苦手な学習は興味のあるジャンルからこじ開ける

 最近はクイズ番組に出場し、次々に正解を繰り出す姿が印象的だ。クイズのための勉強にもコツがあるのだろうか。

「漠然と勉強するのではなく、自分の興味のある分野から始めるといいと思います。ぼくは理系人間なので、社会科分野が苦手なんです。でも海外旅行には興味があるので、世界遺産なら勉強したいなぁって。そしたら地理だけでなく、歴史や文化の知識も増えるんですよね。少しでも興味のある部分から苦手をこじ開けていく、そんな感じです」

 常に前向き。常に一生懸命。さわやかに生きる阿部さんには、18歳のときに出合った「座右の銘」がある。

“make each day one’s masterpiece”

「実はこれ、入試本番の英語の問題の中にあった文章なんです。この言葉が、なぜか心に刺さりました。『今日一日を大切にして生きていけば、その積み重ねの中で道が開けていくのかな、未来はいろんな方向につながっていくのかな』って……。そんなことを試験中に考えるなんて、のんきな受験生ですよね(笑)」

 なにかと批判されがちな受験英語だが、阿部さんは確かにそこで「英語」と出合った。テキストと真摯に向き合い、拾い集めた言葉たちが、阿部さんのいまを輝かせている。

◆阿部亮平(あべ・りょうへい)
1993年千葉県生まれ。2004年にジャニーズ事務所に入所、年にジャニーズJr. 内グループSnow Man 結成、20年CDデビュー。上智大学理工学部在学中に、合格率4%の気象予報士試験を突破、世界遺産検定2級も取得。18年上智大学大学院理工学研究科修了。

(文/神素子)

※「AERA English 2021 Spring & Summer」より