【腎がん手術】患者はどう治療法を選べばいい? 腎臓全摘は慢性腎臓病(CKD)のリスクに 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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【腎がん手術】患者はどう治療法を選べばいい? 腎臓全摘は慢性腎臓病(CKD)のリスクに

週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より

週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「腎がん手術」の解説を紹介する。

【図解】腎がんの治療選択の流れはこちら

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 腎臓は、腹部に左右一つずつある。主な働きは、血液をろ過して尿をつくることだ。腎臓にできるがんのうち、約9割が尿をつくる「腎皮質」にできる。一般的に腎がんというと、腎皮質にできるがんのことを指す。

 高齢者に多く、近年は増加傾向にある。その一因と考えられているのが、健康診断の普及や画像検査の進歩だ。腎がんが発見された人のうち、約8割は無症状で、健康診断や人間ドック、ほかの病気の検査で偶然見つかっている。

 腎がんの進行は比較的ゆるやかで、4センチメートル以下で見つかれば10年生存率は95%を超える。治療の第一選択は手術。主な方法には、がんができた側の腎臓ごと切除する「腎全摘出術」と、がんがある部分だけを切除する「腎部分切除術」がある。

 高齢だったり、持病があったりして手術ができない場合には「監視療法(経過観察)」や「凍結療法」といった方法もある。

 転移がある進行がんの場合、転移が1カ所であれば手術が有効だが、複数ある場合は薬物療法が中心となる。従来の抗がん剤は効果がなかったが、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場で、選択肢が増えている。さらに分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が効果を上げ、大きなトピックになっている。

 腎がんは、比較的進行がゆるやかで、腫瘍が大きくなるスピードは、年間で3~4ミリ。治療の第一選択は手術だが、治療をせずに定期的にCT検査や超音波検査をおこない、経過を観察する「監視療法」が選択されることもある。がん研有明病院の米瀬淳二医師はこう話す。

「高齢であったり、ほかに病気があったりする場合は、監視療法で様子を見ることも選択肢の一つになります」

 また、がんが4センチ以下の場合、一部の病院では凍結療法という選択肢もある。専用の針でがん細胞を凍結し、死滅させる治療だ。手術と異なり局所麻酔で実施できる。ただし、治療後の再発率は手術より高くなるというデータがあるため、全身麻酔に耐えられない人や多発する人など、条件は限られる。

■全摘は将来的にCKD発症のリスクも

 手術を選択した場合、「腎全摘出術」と「腎部分切除術」という二つの選択肢がある。全摘では、二つある腎臓のうち、がんがある側の腎臓を切除する。部分切除では、がんがある場所を部分的に取り除く。腎臓は二つあるため、一つを全摘しても残った腎臓が正常であれば、通常は機能的には余力がある。しかし、残った腎臓の機能に問題があったり、糖尿病や高血圧などがあったりすると、将来的に腎臓の機能が低下する慢性腎臓病(CKD)を発症するリスクが高くなることが明らかになっている。東京女子医科大学病院の田邉一成医師は強調する。

「残った腎臓の機能が不十分な場合にCKDとなります。CKDは心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる心血管疾患を引き起こす因子になります。また、CKDがあると、将来的に薬物治療が必要になったときに、使用量が制限されることもあります。寿命が長くなっているからこそ、その後の人生まで考えて治療を選択する必要があります」

「腎癌診療ガイドライン」では、「4センチ以下の腫瘍にはできるかぎり」「4~7センチの腫瘍でも可能なかぎり」、部分切除が推奨される。全摘となるのは、透析していてすでに腎臓が機能していない場合やがんが腎臓の内部に入り込んでいる場合、がんが大きいため部分切除しても腎臓がわずかしか残らない場合などだ。選択は、術者の経験や技量にも左右される。

「全摘に比べ部分切除の難度は高い。もし主治医から全摘しかできないと言われたら、セカンドオピニオンを聞くことをおすすめします」(田邉医師)

■部分切除にかぎりロボットが保険適用に

 部分切除の術式は、開腹、腹腔鏡、ロボットという選択肢がある。腎がんのロボット手術は、部分切除にかぎり、2016年から保険適用に。ロボットや腹腔鏡による手術は、開腹手術を受けたときと比べて術後の回復が早い。さらにロボットは、部分切除の技術的に難しい点をカバーするため、主流になりつつある。ただし、7センチを超えると保険適用からは外れる。

「ロボットによる部分切除は、からだへの負担が少なく、高齢の患者さんでも安全に手術しやすくなっています」(田邉医師)

 一方、ロボットによる全摘は保険適用外のため、術式の選択肢は、開腹と腹腔鏡となる。

 腎がんの場合、部分切除にしても全摘にしても手術でがんを切除できた場合、再発予防のための薬物療法は効果が証明されていないため、原則としておこなわない。

 腎がんは、治療後10年までは再発する場合があるため、治療後も長く経過を見ていく。

「全摘した場合は、CKDにならないように塩分をとり過ぎないようにしたり、血圧をコントロールしたりすることが大切です」(米瀬医師)

 ランキングの一部は特設サイトで無料公開しているので参考にしてほしい。「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/

【医師との会話に役立つキーワード】

《部分切除》
腎臓を全摘せずに可能なかぎり温存(部分切除)することで、慢性腎臓病を予防し、生存率を延長させることができる。部分切除できるかどうかを必ず確認する。

《CKD(慢性腎臓病)》
腎臓の働きが低下した状態。高齢になるほど多く、心筋梗塞や脳卒中のリスクになる。末期は人工透析が必要になる。腎臓を全摘せずに残すことはCKDの予防につながる。

【取材した医師】
がん研有明病院 泌尿器科部長 米瀬淳二医師
東京女子医科大学病院 泌尿器科教授 田邉一成医師

(文/中寺暁子)

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より


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