短期間で役割を変えて成功している珍しい例が高橋だ。昨年は先発で12勝をマークしたが、チーム事情と連戦が多い特殊なシーズンに対応するためにリリーフに転向。新たな役割を任せられたにもかかわらず、安定感は更にアップし、強力ブルペン陣の一角として大きな存在感を示した。来年どのポジションで投げるかは流動的だが、どちらにせよチームにとって欠かせない存在であることは間違いないだろう。

 一方で苦しんでいるのが高梨と田中だ。高梨は新人王を受賞した年をピークに徐々に低迷。昨年からはトレードでヤクルトに移籍したが、成績の下降に歯止めが止まらない状態だ。来年で30歳と老け込むにはまだ早く、投手陣が弱いチーム事情もあるだけに、何とか復活を目指したい。田中はブレイクした翌年に故障で出遅れたことが響いて大きく成績を落とした。今年は少し持ち直したものの、レギュラー奪取には至っていない状況だ。辰己涼介や小郷裕哉など似たタイプの若手外野手は多いが、長打力のあるスイッチヒッターという希少性をアピールしたいところだ。

 以上、まとめてみると主力として定着したのは山崎、京田、村上、有原、源田、高橋の6人ということになる。投手では山崎はスピードとツーシームという決め球、有原はコントロール、高橋はアンダースローという明確な武器がある強みを感じる。一方の野手ではやはりケガに負けない体の強さが大きいのではないだろうか。今年の受賞者も来年以降続けて活躍するためには、そのあたりが重要になってくるだろう。1年だけで華々しく散るのではなく、今後も長く活躍する新人王受賞者が出てくることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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