この4大症状は、多くの人が感じたことのあるようなものばかりだが、ほとんどは一時的な症状で、慢性化しないことが多いという。こうした症状が、間欠的でも長く続くようであれば、機能性ディスペプシアの疑いがある。

 機能性ディスペプシアにかかる原因について語るのは、非常に難しい。なにしろ、簡単には原因がつかめない病気が機能性ディスペプシアなのであって、原因がはっきり特定できてしまえば、それは機能性ディスペプシアからは除外され、新たに単独の疾患となる可能性も高い。

 とは言え、機能性ディスペプシアについての研究は日々進んでいて、いくつかの原因は判明しつつある。

「機能性ディスペプシアの3大原因と言われているのが、胃や十二指腸の運動障害、知覚過敏、社会心理的ストレスです。最近では、食事因子や腸内細菌叢(そう)の異常も関係しているのではないかと考えられています。また、内視鏡では捉えきれない微小炎症によるリーキーガットが原因になることもあります」

 リーキーガットとは「腸の透過性亢進(こうしん)」のことで、腸のバリア機能が弱まり、内容物が体内に漏れてしまっている状態を指す。

「心臓や脳は外界と接することはありませんが、口から食道、胃、腸、肛門はすべてつながっていて、ある意味で外界と接していると言えます。そのため、消化管には多くの菌が存在している状態です。普段は、腸壁がバリアの役割をして、菌が体の内側に入り込まないようになっていますが、微小炎症によってリーキーガットを起こしてくると、細胞と細胞の隙間がゆるくなり、菌が入り込んでしまいます」

 ほかにも、機能性ディスペプシアには自律神経が関係しているという説もある。自律神経が乱れないように、生活リズムを整え、睡眠をしっかりとり、適度に運動をすることも、予防や治療には重要だという。
 
 このように、機能性ディスペプシアは、年々その正体が明らかになってきていて、疾患としての認知度も高まってきている。しかし中には、「おなかが痛いくらいでは病院に行けない」と思う人もまだまだ多いだろう。

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機能性ディスペプシアを治療するメリットは?