鍵山優真(左)と佐藤駿(右) (c)朝日新聞社
鍵山優真(左)と佐藤駿(右) (c)朝日新聞社

 2020ユース五輪金メダリスト・鍵山優真(17)と、昨季ジュニアグランプリ(GP)ファイナル王者・佐藤駿(16)。自他ともに認める好敵手であり、同学年の友人でもある二人は、今季そろってシニアデビューを果たした。

 2人のシニアデビュー戦となった関東選手権(10月1~4日、茨城・山新スイミングアリーナ)へのエントリーは鍵山と佐藤の二人のみで、フィギュアスケートでは珍しい一対一の対決となった。これからも切磋琢磨していくだろう二人の道程を象徴するようなシニアデビュー戦だった。

 ただ結果を見ると、ショートで2本・フリーで3本の4回転を決め、合計287.21(国内大会は国際スケート連盟[ISU]非公認)と世界歴代5位に相当するハイスコアを出した鍵山に対し、ショートで1本・フリーで2本の4回転を成功させたもののジャンプのミスが目立った佐藤は合計198.42と点が伸びず、思わぬ大差がついた。銅メダルを獲得した昨季四大陸選手権で出した自己ベスト270.61を16点以上上回った鍵山に対し、佐藤は昨季ジュニアGPファイナルでマークした自己ベスト255.11を56点以上も下回った。

 4種類の4回転を跳ぶ佐藤は高難度のジャンプ構成に挑んでいくスタイルで、それだけに少し調子が狂うと大崩れする傾向があり、今回は残念ながら悪い方に転んでしまった。練習から好調な鍵山を見て「僕も頑張ろう」と思ったという佐藤だが、同時に「その気持ちがちょっと強すぎたかなと思っています」とも語っている。鮮烈なシニアデビューを果たした鍵山を讃えると同時に、シーズンが進むにつれ佐藤のジャンプが安定していくことを期待したい。

 一方、スコアとは別の部分で、二人のシニアデビュー戦からはそれぞれの魅力が伝わってきた。佐藤の最大の武器は、現状最も難しいジャンプである4回転ルッツだ。佐藤が自己ベストを更新して優勝した昨季ジュニアGPファイナルは、佐藤が初めて4回転ルッツを成功させたISUの公式戦でもある。4回転ルッツは、佐藤のプライドなのだろう。

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2人の若手らしい積極的な演技