昨年は主砲の吉田正尚が29本塁打を放ったが、吉田の次にホームランが多かった日本人選手は小島脩平と杉本裕太郎の4本というところにその深刻さがよく表れている。今年はかつてのホームラン王であるT-岡田が少し復活の兆しを見せているものの、年齢を考えるとこれ以上の上積みは考えづらい。

 大物外国人のアダム・ジョーンズを補強したが、起爆剤にはなれていないのが現状だ。中島聡監督代行になり、杉本や育成ドラフトで入団した大下誠一郎を抜擢するなど打線を変えようという努力は見られるが、強打者タイプの不足は誰の目にも明らかである。過去2年間のドラフトで太田椋、紅林弘太郎という高校卒でスケール感のある右打者を獲得したのはプラス材料だが、ある程度三拍子揃った選手ばかりではなく、打撃に特化したような選手にももっと目を向けていくべきだろう。

 課題は少なくないものの、投手では山本と山岡、野手では吉田正尚という太い柱がいることは大きな救いである。そして今後のために重要なことは、目先の結果だけを考えずに長期的なスパンでチームを強化していくことだろう。そういう意味では過去2年間のドラフトは今までとは明らかに方針の変化が見られていることは確かだ。

 そして更に重要なのはこれを続けることである。スケール型の高校生選手を中心に指名してもすぐに結果が出るわけではなく、チームが低迷したからまた中途半端な即戦力中心に戻すと、完全に負のスパイラルに陥っていくことになる。チームが最下位に沈んでいる今年も、昨年のような指名をすることができるのか。まずはそこに注目したい。(文・西尾典文)

●西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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