その他では“パイオニア”である野茂英雄が、メジャーに渡ってから最初の2年でともにナ・リーグのサイ・ヤング賞投票で4位に入っている。1年目の1995年にはグレッグ・マダックス、1996年にはジョン・スモルツと、ともに当時黄金時代を築いていたブレーブスの投手に同賞を譲ったが、まだ日本人投手が活躍した例がない中でレジェンドたちと並び立つような実績を作ったからこそ、今のダルビッシュらの活躍があるのは言うまでもない。

 投票でトップ10に入ったということであれば、36歳でメジャーに挑戦した斎藤隆(当時ドジャース)が1年目の2006年に8位となり、かつては侍ジャパンでもエースを務めた松坂大輔(当時レッドソックス)が18勝(3敗)、防御率2.90をマークした2008年に4位につけている。現役では田中将大(ヤンキース)が3年目の2016年に7位に入った経験を持つ。

 このように、非常に格式の高いサイ・ヤング賞の投票で、票に値すると評価された日本人投手は決して少なくないのが分かる。しかし、あと一歩のところまで行ったものの、ここまで獲得できていないのが実情である。

 最後に、「ダルビッシュは今年、サイ・ヤング賞を獲れる」と多く報道されているが、実際にどれほどサイ・ヤング賞が近づいているのか検証してみたいと思う。

 下記が今季これまでの主要な成績だ。※()内はナ・リーグの順位、成績は全て現地9月4日の試合終了時点のもの

■勝利数:7勝(1位)
■防御率:1.44(1位)
■奪三振:63個(1位)
■イニング数:50回(1位タイ)

 昨年、ジェイコブ・デグローム(メッツ)がわずか11勝(8敗)でサイ・ヤング賞に輝いたことからも分かるように、メジャーリーグでは勝利数はそこまで評価の対象とならないが、これまで単独1位。投手としての査定として最も重要なものの一つである防御率が1位、奪三振数もリーグトップとなっており、サイ・ヤング賞と同時に投手三冠も獲得できる位置にいる。

 その他にも、WHIP(0.88)は3位、三振と四球の割合を示すK/BB(7.88)は1位、クオリティスタートの回数(7回)は1位タイと主要三部門の成績以外でもトップクラスの数字をマークしているものが非常に多い。現状、サイ・ヤング賞争いでは頭一つ抜けているといっても過言ではない。

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最大のライバルとなりそうなのは?