■食べることと並行して全身のリハビリも

 そこで少量の冷水を飲む「水飲みテスト」や、ゼリーやプリンを食べる「フードテスト」などをおこなってのみ込みの状態を調べ、現時点で安全に食べられる食形態を見つけ出す。一般にとろみのついているものはのみ込みやすく、とろみが薄くなるほどのみ込みにくくなる。水は最ものみ込みが難しいものの一つだ。

 安全にのみ込むことができるものからスタートし、しっかりのみ込めていることが確認できたら次のステップに進み、段階的に普通の食事に近づける。食べるときには口や舌、のどなどの筋肉を使うので、一番のリハビリテーションになるという。

 並行して、それぞれの状態に合わせた全身のリハビリテーションも開始する。難しいことをするわけではなく、最初はベッド上でからだを起こし、できれば背もたれなしで座ってみる。それだけでも腹筋や背筋を使う上に、頭の重さがかかって首の筋肉に力が入るので、のみ込みに使う筋肉の衰えも予防できる。それができたら立つ、つかまり歩き、足の筋力トレーニングを加える、というようにステップアップしていく。

「誤嚥性肺炎の入院患者が早期に経口摂取やリハビリテーションを始めると、入院日数が短縮する、肺炎による死亡率が減るといったデータが複数報告されています。退院後のQOL(生活の質)も改善することができるのに、積極的に取り組む病院は多くないというのが実情です。患者さんやご家族は、入院時に主治医や看護師に『リハビリを受けたい』と伝えてみてください。病院の管理栄養士や栄養サポートチームに相談するのも一つの方法です」(若林医師)

(文・谷わこ)

≪取材協力≫
東京都健康長寿医療センター 呼吸器内科部長 山本 寛医師
横浜市立大学 市民総合医療センター リハビリテーション科准教授 若林秀隆医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より