治療は、原因となる細菌に合った抗菌薬を使うことが基本だ。

 軽度なら飲み薬が使われ、中等度から重度の場合は、注射薬(点滴)による治療がおこなわれる。高齢者は症状が軽くても入院になることが多いが、適切な抗菌薬治療をすれば炎症は治まり、1~2週間ほどで退院できるという。

 しかし誤嚥性肺炎を発症する人は、もともと加齢などによって嚥下機能が低下しているため、肺炎の治療後も誤嚥を繰り返す。そうならないように、栄養管理やリハビリテーションで嚥下機能を維持することが重要だ。横浜市立大学市民総合医療センター・リハビリテーション科准教授の若林秀隆医師は、こう話す。

「肺炎の治療が終わってからではなく、できれば治療開始と同時、遅くとも2日以内に栄養管理とリハビリテーションを始めることで効果を高めることができます」

■エネルギー摂取 点滴では不十分

 高齢者が誤嚥性肺炎で入院すると安静が指示され、食事をやめて腕からの点滴(末梢静脈栄養)で栄養を補給するケースが少なくない。しかし寝たきりでからだを動かさない状態が続くと筋力はどんどん低下する。一方、口から食べなくなると、嚥下機能も落ちていく。また、点滴をしていれば栄養が摂取できていると考えがちだが、腕からの点滴だけでは十分なエネルギーは摂取できない。もともと低栄養気味の高齢者はさらに栄養が不足して筋肉量の低下に拍車をかけ、免疫力や体力も落ちていく。

 その結果、肺炎の治りが悪くなるだけでなく、治っても口から食べられなくなったり、歩けなくなることもある。若林医師は言う。

「病状によっては安静や禁食が必要な場合もありますが、からだを起こす程度なら問題なかったり、とろみのある食事にすれば食べられるという人も少なくありません。まず、嚥下や全身の状態を正確に把握する必要があります」

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