薬物治療は、良性腫瘍には無効なためおこなわない。

 悪性脳腫瘍の治療は、手術で切除できる部分を切除した後、放射線治療や薬物治療をおこなう。再発した場合には、再手術や再度の放射線治療、薬物の追加や種類の変更などで対処する。また現在、さらに効果的な治療を求め、さまざまな治験も進められている。

「19年6月から、標準治療が終了した固形がんの患者さんに対して、網羅的な遺伝子検査が保険適用になりました。今後、悪性脳腫瘍の患者さんに対しても、さらに効果のある分子標的薬などの使用が期待されています」(成田医師)

 転移性脳腫瘍では、小さく数が多い場合にはガンマナイフやサイバーナイフなどの定位放射線治療が有効とされる。これは頭部を固定し、ピンポイントで腫瘍を照射する方法だ。大きさが3センチを超えるものや、脳の表面に腫瘍がある場合などには手術で切除することもある。いずれにしろ、からだのがんの主治医と十分に連携しつつ進めることが不可欠となる。

 脳腫瘍の治療には、病理診断や遺伝子診断による悪性度の的確な判断と適切な治療方法の選択、機能の温存と再発抑制との兼ね合いなど、高度な技術と経験が必要だ。脳腫瘍と診断された場合(特に再発)には、がんセンターや大学病院など高度な専門施設での受診やセカンドオピニオンを求めることが勧められる。

なお、脳腫瘍手術に関して、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。同ムックの手術数ランキングの一部は特設サイトで無料公開。
手術数でわかるいい病院
https://dot.asahi.com/goodhospital/

(文・梶 葉子)

≪取材協力≫
国立がん研究センター 中央病院 脳脊髄腫瘍科長 成田善孝医師
横浜市立大学 市民総合医療センター 脳神経外科部長 坂田勝巳医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より