■できた場所により症状はさまざま

 脳腫瘍では、腫瘍ができた場所によって出る症状が異なる。頭痛や吐き気、意識障害のほか、けいれん発作やてんかん、手足の痺れや麻痺、聴力や視力、発語、記憶などの障害、気分の落ち込みなどさまざまだ。また近年、脳ドックなどの普及に伴い、全く症状のない(無症候性)腫瘍が見つかることも多くなった。

「良性脳腫瘍は進行が遅いため、症状の出方がゆっくりです。できた場所によっては、ほとんど症状が出ないものもあり、見つかったときにはかなり大きくなっている場合もあります」

 横浜市立大学市民総合医療センターの坂田勝巳医師は話す。

 逆に悪性の場合には数週間で急激に大きくなるため、受診時には生活に支障が出ていることも多い。

 脳腫瘍の検査はCTやMRIなどでおこなうが、最終的な確定診断は、手術で採取した腫瘍組織の病理診断や遺伝子診断によっておこなわれる。からだのがんの場合、進行度によってステージ0~IVで分類されるが、脳腫瘍は悪性度によってグレード1~4の分類となる。グレード1は良性、グレード2~4は悪性という区分けだ。なお、これは原発性脳腫瘍のみの分類で、転移性の場合は、脳に転移した時点でステージIVの進行がんと診断される。

■機能を損なわず 安全に最大限取る

 脳腫瘍の治療は、手術、放射線治療、薬物治療が基本となる。治療の選択や組み合わせは、原発性か転移性か、良性か悪性か、またグレードによっても異なる。

「脳腫瘍の手術は、脳の機能を損なわず、安全に最大限取ることが非常に重要です。そのため、術中の脳波・筋電図モニタリングや術中MRI、手術ナビゲーション、覚醒下手術など、さまざまな方法を駆使して手術をしています」(成田医師)

 覚醒下手術とは、手術中、皮膚や頭蓋骨を切開した後に麻酔から覚醒させ、機能が保たれているかどうかを確認しながら切除する方法だ。脳には痛みを感知する受容体がないため、腫瘍のある脳を切除しても痛みは感じない。

 良性脳腫瘍では経過観察になる場合もあるが、症状の出方や浮腫(脳のむくみ)の状況、腫瘍の大きさなどにより手術が必要になる。

「腫瘍が神経や血管を巻き込んでいたり、難しい場所にあってすべて取り切れなかった場合や、数は少ないものの病理診断で悪性度が高かった場合には、手術後に放射線治療を追加することもあります」(坂田医師)

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