抗ウイルス薬の早期の服用は、帯状疱疹後神経痛を残さないためにも重要だ。帯状疱疹は、皮膚の症状が治ったあとも、痛みが残ることがあり、3カ月以上続く場合、帯状疱疹後神経痛と呼ばれる。初期の治療が遅れて神経が障害されると、神経痛を残しやすくなる。

■    抗ウイルス薬と痛み止めが中心

 帯状疱疹の治療は、抗ウイルス薬に、痛み止めを組み合わせるのが一般的だ。痛み止めは、主に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンなどが使用される。愛知医科大学病院皮膚科教授の渡辺大輔医師はこう話す。

「NSAIDsは、胃や腎臓に負担がかかるので、高齢者が服用する場合は、注意が必要です。その点、アセトアミノフェンは、胃や腎臓に負担がかからないので、高齢者でも服用しやすいといえます。こうした痛み止めを服用しても夜眠れないなど、痛みがつらい人は、痛みの治療を専門とするペインクリニック(麻酔科)に紹介します」

 ペインクリニックでは、神経ブロックなどを中心に、痛みを集中的に治療する。帯状疱疹の治療は、早期からウイルスの増殖を抑えると同時に、痛みに対してもしっかり治療することが、痛みを長引かせないためのカギとなる。

 帯状疱疹後神経痛に比べると頻度は低いが、帯状疱疹になると顔面神経麻痺、視力障害、尿閉(膀胱から尿が出ない状態)など、症状が出た場所によって、さまざまな合併症が起きることがある。特に高齢者ほど重症化して、合併症を起こしやすい。

    50歳以上なら予防接種が可能に

 そこで、16年から50歳以上を対象に接種できるようになったのが、水痘ワクチンだ。幼児が水痘予防のために定期接種しているのと同じ生ワクチンをそのまま使用する。米国の大規模な臨床研究では、帯状疱疹の発症を半分程度に、帯状疱疹後神経痛の発症も3分の1程度に抑えられるといわれている。また、ワクチンの効果は8年程度持続すると考えられている。

 しかし、免疫抑制剤や抗がん剤を使用している人は、帯状疱疹を発症しやすく重症化しやすいのにもかかわらず、水痘ワクチンを接種できない。ワクチンによる感染のリスクがあるためだ。その難点を補うことが期待されているのが、今年1月に接種可能となった、帯状疱疹の不活化ワクチンだ。

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発症率を97%、神経痛90%を抑えることができる