■正確な知識を持って仕事中の病気やけがに対応を

 先述のように労災保険は幅広く適用されます。ただ実際に、労働者の補償についてあまり関心がない事業主の場合、
●労災が適用されるのは正社員だけ
●小さい会社だから労災には加入していない
●この程度のけが・病気は労災の対象じゃない
などと言われる場合もあるかもしれません。
 
 もちろん、労災保険はパート、アルバイトにも問題なく適用できます。「小さい会社だから」というのは何の理由にもならず、たとえ事業主と労働者の2人だけの職場であろうと、事業主には労災保険の加入義務があります。

 また労災保険が適用できるかどうかは会社ではなく、労働基準監督署が判断することです。もちろん「自己負担分は会社が支払うので健康保険を使って」というのもNGです。

■ウイルス禍で注目されたフードデリバリー、事故のときの補償は?

 今回の新型コロナウイルスが広がる状況で、注目されたのがフードデリバリーサービス。デリバリーの大手は、社員やパート、アルバイトのような雇用契約ではなく、配達者個人と業務委託契約を結んでその対価を支払う形態で事業を行っています。

 これは食べ物だけでなくネット通販などの配送業などでも取り入れられている仕事の形態で、働いている人は一般に「プラットフォームワーカー」などと呼ばれ、若い人を中心に「手軽に稼ぎたい」という人が数多く参加しています。
 
 このような働き方の場合、事故を起こしたり巻き込まれたりした場合の補償はどうなるのでしょうか。特にフードデリバリーの場合、自転車などでの路上運転時間が長いので、差し迫った問題になります。

 答えを言えば、このような仕事の形態では労災保険は適用されません。この場合は働いている人は個人事業主にあたります。個人事業主は、その名の通り誰かに雇用されているのではなく自営で仕事をしている人で、個人商店主や作家、プロスポーツ選手などと同じ事業の形態になります。
 

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デリバリーの仕事などを始めるときは契約内容の検討を