個人事業主は基本的に労災保険に入ることができません(※)。事故でけがをした場合は、自分の健康保険や民間の事故や傷害保険に頼ることになります。また、休業中の公的な補償もありません。


 
「ちょっとした収入に」と始めた仕事で、多額の医療費を自分で支払うことにもなりかねないので、デリバリー事業などに参加する際は、よく契約の内容を検討してください。たとえばフードデリバリーの大手では、民間の保険会社と契約して、配達者が事故などでけがをした場合に「医療見舞金」として、最大25万円補償するとしているところもあります。

 ただ治療費すべてが原則補償される労災保険とは異なりますので、仕事の内容と収入をしっかり考えることが必要です。
 
※個人タクシーや土木建設業などいわゆる「一人親方」は、労災保険の特別加入の制度を使って労災保険に入ることができます。車やバイクでの運送業も可能です(営業許可が必要な場合もあります)。ただし特別加入する場合は、個人での特別加入保険料の支払いが必要になります。なお、特別加入制度については改正の動きもあるので、その際は改めて解説したいと思います。

 次回も医療に関係した社会保障について、引き続き解説していきたいと思います。

(構成・橋本明)

※本連載シリーズは、手続き内容をわかりやすくお伝えするため、ポイントを絞り編集しています。一部説明を簡略化している点についてはご了承ください。また、2020年7月13日時点での内容となっています。

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小泉正典

小泉正典

小泉正典(こいずみ・まさのり)/特定社会保険労務士。1971年、栃木県生まれ。明星大学人文学部経済学科卒。社会保険労務士小泉事務所代表、一般社団法人SRアップ21理事長・東京会会長。専門分野は、労働・社会保険制度全般および社員がイキイキと働きやすい職場づくりコンサルティング。『社会保障一覧表』(アントレックス)シリーズは累計55万部のベストセラー

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