(イラスト/今崎和広)
(イラスト/今崎和広)
『新「名医」の最新治療2020』より
『新「名医」の最新治療2020』より

 加齢により眼球の黄斑部に障害が起こり、視力が低下する加齢黄斑変性。日本人患者の9割が「滲出型」と呼ばれる進行の早いタイプにあたり、放置すると失明のリスクもある。かつては不治の病とも言われたが、現在は早期発見・早期治療により失明を防ぐことができるという。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』で、専門医に話を聞いた。

【図】加齢黄斑変性にかかりやすい年代は?主な症状は?

*  *  *

滲出型の治療法としては、「抗VEGF療法」が、第一選択となる。VEGF(血管内皮増殖因子)とは、血液中に含まれる糖たんぱくの一種。新生血管と呼ばれる異常な血管を増殖させたり、新生血管から血液成分を漏れ出しやすくさせたりする働きなどがあり、黄斑部が障害される。抗VEGF薬は、VEGFの働きを妨げることで新生血管の増殖を抑え、血液成分の滲出を防ぐ。

「抗VEGF薬の登場で、加齢黄斑変性の治療は大きく変化した」と東京女子医科大学病院眼科教授の飯田知弘医師は話す。

「この薬のメリットは、病気の進行を抑え、視力を維持するだけでなく、早期治療により視力の改善も可能となることです。デンマークの研究では、この薬の登場により、加齢黄斑変性による失明者数が半減したという報告もあります」

「早期に治療するほど一般的には予後も良い」と名古屋市立大学病院眼科教授の小椋祐一郎医師は話す。

「視力が低下する前に抗VEGF療法をおこなえば、例えばもとの視力が1.5の人なら、その視力を維持することが可能なことも。一方、視力が0.1に落ちてしまったものを1.0に戻すことは難しく、病気が進行した後では、0.1を0.3に戻すぐらいが精いっぱいです。見える目を維持したいなら、早期治療が重要です」

 抗VEGF療法は、眼球に注射をして抗VEGF薬を注入する。「目に注射をする」と聞くと怖いと感じるかもしれないが、「麻酔もするし、非常に細い針なので痛みは感じない」と両医師はいう。

次のページ