始まった日本マラソンの「高速化」 さらなる記録更新に“必要な環境”とは?

2020/03/19 17:00

東京マラソンで自身の持つ日本記録を更新した大迫傑(c)朝日新聞社
東京マラソンで自身の持つ日本記録を更新した大迫傑(c)朝日新聞社

 東京五輪代表争いのマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)に続く、ファイナルチャレンジ男子第2戦の東京マラソンでは、大迫傑(ナイキ)が自身の持つ日本記録を更新する2時間05分29秒で4位になって五輪代表に内定した。さらに高久龍(ヤクルト)と上門大祐(大塚製薬)が2時間06分45秒と2時間06分54秒と、日本歴代4位と6位タイの記録をマーク。他にも2時間7分台が7人で8分台は5人、9分台は4人と収穫のあるレースとなった。

【写真】雄叫びをあげゴールした大迫の印象的なシーンがこちら

 中でも大迫の走りは、冷静さを見せるものでもあった。中間点を過ぎて先頭集団からは遅れたが、「離れてからはいかにリラックスして自分のリズムを立て直すかだけを考えていた」と、そこからの落ち込みを最小限に抑え、前にいる井上大仁(MHPS)を視野にとらえる走りをし、32km過ぎで追いつくと35kmまでを14分56秒に上げる走りで日本人トップを決定づけた。そしてその後も15分15秒、6分38秒とペースを落とさず、自身が持っていた日本記録を21秒更新する走りを見せたのだ。

 それでも終盤は左脚の付け根付近が痛み出し、大会記録狙いから優勝狙いに変えたというビルハヌ・レゲセ(エチオピア)には、1分14秒差をつけられた。30kmから14分台に上げる盛り返した走りは五輪本番での入賞の可能性も高いというのは見せたが、メダルとなるとまだまだ厳しい状況だ。

 02年10月のシカゴマラソンで高岡寿成(カネボウ)が、当時の世界記録にあと34秒まで迫る2時間06分16秒を出して以来、日本の男子マラソンは18年2月に設楽悠太(Honda)が2時間06分11秒を出すまで停滞していた。その間世界は08年に3分台に入ると、14年には2分台に入り、18年には2時間01分39秒まで進化している。

 そんな中で遅ればせながら動き出してきた日本だが、今回の収穫は東京五輪代表の条件が2時間05分49秒以内ということもあり、中間点通過は井上の1時間01分59秒や大迫の1時間02分00秒の他にも、1時間02分20秒台で通過した選手が21人もいたことだ。選手たちの記録に対する意識が大きく変わってきているのは大きな収穫だった。

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世界の「高速化」にどう立ち向かう?

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