ヤクルト・山田哲人 (c)朝日新聞社
ヤクルト・山田哲人 (c)朝日新聞社

 日本プロ野球の今オフの動向の中で一つの大きなニュースとなったのが、「巨人FA補強失敗」である。1993年オフの落合博満に始まった巨人のFA補強によって、これまで計26人の選手が入団。13年オフからは6年連続で計11人(片岡治大、大竹寛、金城龍彦、相川亮二、脇谷亮太、山口俊、陽岱鋼、森福允彦、野上亮磨、炭谷銀仁朗、丸佳浩)の新たな血を入れてきたが、今オフは7年ぶりのFA補強ゼロとなった。決して静観していた訳でなく、美馬学、鈴木大地の獲得に動き、美馬に至っては原辰徳監督自ら出馬した上での「断り」であり、巨人にとっては大きな誤算だったことは間違いない。

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 その巨人が、来オフに向けて早くも獲得に乗り出すと噂されているのが、ヤクルトの顔であり、パワーとスピードを高次元に併せ持ち、史上初めてトリプルスリーを複数回(3度)達成した山田哲人である。人気、実力ともに申し分なしの日本球界屈指のスター選手であり、昨秋の「プレミア12」で日本を優勝に導く決勝3ランを放って、さらに名を上げた。順調にいけば今季中にFA権を取得する見込みで、今年7月の誕生日でまだ28歳という年齢も大きな魅力である。

 その山田の「巨人移籍説」。その根拠としては、巨人が長年追い求めている二塁手であること、山田自身が幼少期からの巨人ファンであること。さらに推定年俸5億円まで膨れ上がったコスト面、ヤクルトからの複数年契約提示を断って単年契約を選択したことなどが挙げられる。山田がプロ入り前から憧れ、現在は仲の良い坂本勇人の存在もある。「山田&坂本」の二遊間は魅力満載だろう。

 だが、「巨人・山田」は、本当に喜ぶべきことなのだろうか。巨人には現在、和製4番として絶賛成長中の岡本和真だけでなく、大城卓三、若林晃弘、田中俊太、増田大輝といった若手内野手が台頭。それが昨季のリーグ優勝の原動力の一つになった。新シーズンへ向けては、吉川尚輝が怪我から復帰し、外野手ではあるがイースタン首位打者に輝いた山下航汰という存在もある。首脳陣が刷新された中で、再び出来上がろうとしているドラフトで指名した選手を自前で育てる「自給自足」の流れに逆行するのは喜ばしいことではない。

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山田哲人の移籍先が野球人気を左右?