選手登録されていない選手は、たとえ相手チームの同意があっても出場できない。ヤクルトは17年、ブルペン捕手だった新田玄気を育成選手契約し、急場をしのいだ。

 プロ野球でこのような“捕手不足”が生じるのは、球団ごとのチーム編成の判断によるところが大きい。また、今シーズンに捕手で規定打席に達した捕手が12球団でわずか5人だったことからも、投手との相性で使い分ける近年の起用法も影響していると言える。だが、捕手不足はプロに限ったことではない。

「捕手は重労働だし、やりたがる子が少ないのは間違いない。目の前でバットを振られるのが怖いという子もたくさん見てきました」(野口氏)

 1989年にヤクルトに入団し、その後、北海道日本ハムファイターズ、阪神タイガース、横浜ベイスターズ(現DeNA)を渡り歩き、21年もの間、プロの第一線で活躍してきた野口氏。その野口氏も、野球を始めたときは内野手だった。チームの正捕手がケガをしたことをきっかけに、捕手にコンバートされたのがきっかけだったという。

 そのまま中学でも捕手を務め、千葉県の強豪・習志野高校に進学。入団時は一年生だけで30人ほどいたが、捕手志望は野口さん一人だった。このことからも、捕手のなり手がいかに少ないかがわかる。

 そして高校野球での経験から野口氏が考える、捕手不足の原因の2つ目が「捕手の指導者がいない」ということだ。

「高校時代、指導者から言われたことで思い出すのは『しっかり放れ』『しっかり捕れ』ということくらいです。具体的にどうすればいいのか、やったことがない人にはわからないんです。専門的な指導を受けられたのは、プロに入ってからでした」

 野口氏は、定期的に地域の少年野球教室でアマチュアの指導にあたっている。指導者の技術不足に危機感を抱き、子どもたちへの指導だけでなく、保護者らアマチュア野球の指導者講習の必要性も痛感している。

「野球教室に行くと、『捕手の方に来ていただいて助かりました』と毎回言われます。捕手は特殊なポジションですから、経験者でないと教えられない。くわえて経験者でも今の指導者は現役時代に“自己流”でやっていた世代。指導者の育成の必要性を痛感しています」

次のページ
「名捕手は出ないもんかね…」