野村克也氏がボヤく「捕手不足」。プロ野球には、子どもたちの目標となる名捕手の誕生が待たれる…(C)朝日新聞社
野村克也氏がボヤく「捕手不足」。プロ野球には、子どもたちの目標となる名捕手の誕生が待たれる…(C)朝日新聞社

 2019年のプロ野球の公式戦入場者数が2653万6962人(1試合平均3万929人)となり史上最多を更新した。野球人気の低下が叫ばれてきた近年で、明るいニュースと言えそうだが、その陰で野球界が依然として抱えている問題をご存じだろうか。

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 埼玉西武ライオンズは5月、2軍育成コーチだった星孝典と育成選手契約を締結したと発表した。星は16年に現役を引退しており、育成として再契約したときには37歳だった。同月末には横浜DeNAベイスターズが、2軍バッテリーコーチ補佐兼育成担当だった鶴岡賢二郎と育成選手契約を締結した。同様に鶴岡も15年に戦力外通告を受けて現役を引退していた。

 相次ぐ、引退捕手の現役復帰。その理由について、両球団はいずれも「ファームにおいて捕手の試合出場選手が一時的に不足しているため」としている。どういうことか。

「今の時代、キャッチャーをやりたがるやつがいないんだよ」

 そうボヤくのは、現役時代に捕手で史上初の三冠王に輝くなどの功績で名球会入りし、現在は野球解説者の野村克也氏だ。

「何年前になるかな、リトルシニアの中学生を指導していたことがあったんだよ。その時から予言していたもん。捕手が足りなくなるって。シニアのチームには選手が何十人もいたけど、入団してきたときに捕手を希望するやつは一人もいなかった」

 以前から捕手不足を危惧していたという野村氏。ボヤきは止まらない。

「『お前キャッチャーやれ』って指名しないと駄目なんだろうね。しんどいんだよ。立ったり座ったり。今はみんな楽をしてかっこいいポジションをやりたがる。昔は投手の次に捕手が人気だったけど、今は投手と二遊間が華形になっている」

 その野村氏から現役時代に指導を受けた元プロ野球選手で、野球解説者の野口寿浩氏も、捕手不足に危機感を抱いている一人だ。

「実は僕も、ヤクルトの2軍コーチだったときに(西武や横浜の捕手の育成契約と)同じ状況に遭遇したことがあります。1試合に捕手が3人出るというのはよくありました。すると試合後半、捕手がケガしたら交代できる控えがもういないという状況になる。内野や外野は他のポジションの選手でもごまかしがききますが、捕手はそうもいかない。冗談半分ですが、球団関係者から『捕手がいなくなったら野口が出ろ』なんて言われたこともあります」

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捕手不足はプロに限ったことではない