「フィギュア・カナダGP」女子2位となりメダルを手にする紀平梨花 (C)朝日新聞社
「フィギュア・カナダGP」女子2位となりメダルを手にする紀平梨花 (C)朝日新聞社

 今季シニアデビューしたアレクサンドラ・トゥルソワ(ロシア)が、女子が跳ぶジャンプの領域を広げている。スケートカナダでは、フリーで現状最高難度の4回転であるルッツを含む4本の4回転を組み込んで優勝。シニアデビュー戦(ネペラメモリアル)で出した自らの世界最高得点を更新する、166.62という桁外れの高得点をたたき出した。幼さも残るトゥルソワだが、15歳にして既に一流のアスリートだ。

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 スケートカナダのショートで首位に立ったのは、紀平梨花だった。フリーの滑走順が一つ前だったトゥルソワが高得点を出した直後にもかかわらず、1本目のトリプルアクセルの着氷でステップアウトした以外ほぼミスのない演技をみせた。ノーミスの滑りをしても勝てるかどうか分からない状況におかれたにもかかわらず、自分に集中できる強さを発揮したのだ。ただそれでも、規定で4回転は跳べないショートでの6.95点差を逆転され、合計では10.69点差をつけられての2位に終わった。4回転を避けては通れない時代になったことを、紀平自身も観る者も痛感する結果だった。

 しかし、ジュニア時代からトゥルソワと同じ大会で競っていた紀平にとり、それは驚きではなく想定内の事態だろう。本格的なシーズン開始を前にした10月4日、ジャパンオープンの前日練習で、ジュニアからシニアに上がってきたトゥルソワについて問われた紀平は、次のように語っている。

「二年前ぐらいから一緒にやってきていた選手だったので、今出てきたというよりは前からすごいなと思っていた選手が(シニアに)上がってきたな、という感じ。特に気持ちは変わらない」

 その言葉を聞いて、思い出されたのは名古屋で開催された2017年のジュニアグランプリファイナルだ。紀平はフリーでトリプルアクセル―3回転トゥループという世界初の大技を成功させたにもかかわらず4位に終わり、回転不足で転倒したものの4回転サルコウに挑んだトゥルソワが優勝した。紀平はその頃から4回転の威力を痛感していたからこそ、今も冷静に自分に集中できているのだろう。
 

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紀平の強みは総合力