AKB48を初期から支えた前田敦子 (c)朝日新聞社
AKB48を初期から支えた前田敦子 (c)朝日新聞社

 半年前に第1子を出産した前田敦子の主演映画「葬式の名人」が公開中だ。その番宣でバラエティ番組にも多数出演。「しゃべくり007」では「28に見えない」とネットがざわつき、年齢より若く見える有名人を挙げる大喜利現象が発生した。また「沸騰ワード10」では酢にハマっている食生活を告白。「お酢をかけるとカロリーが半減される」というサンドウィッチマンみたいな理論で笑いをとった。

【画像】初々しすぎるAKB48時代の前田敦子

 そんな前田がAKB48を卒業したのは、今から7年前。グループは今も存続しているが、彼女をはじめ「神7」と呼ばれたメンバーたちはもういない。その次の時代を支えた指原莉乃も卒業した。現在のAKBはスター不足を否めず、後発の乃木坂46や欅坂46に圧され気味である。

 そこでふと考えたくなったのが、おニャン子クラブとの比較だ。こちらは実質2年数ヶ月の活動だったが、伝説としてのイメージは揺るぎがない。つい先日も、渡辺美奈代が50歳のバースデーライブを超ミニスカートで行ない、ネットニュースになった。解散から32年たってもなお、それくらいの注目度はあるのだ。

■川栄、指原の失速

 おニャン子が伝説化したのは、秋元康が手がける大所帯グループの嚆矢(こうし)ということに加え、ひとりのメンバーの芸能人としての長期的成功が大きい。工藤静香だ。ブーム後半に登場した彼女は解散後、ソロアイドルとしてヒット曲を連発、ドラマにも主演した。私生活では諸星和己やYOSHIKIらと浮名を流したあと、平成随一の男性スター・木村拓哉と結婚。主婦となってからも、趣味の画業などで話題をふりまき、最近は次女・Kokiのモデルデビューで注目を維持している。

 じつはブームが伝説化するには、こうした存在が不可欠なのだ。GSブームでは沢田研二や萩原健一、70年代のアイドルブームでは山口百恵、80年代のアイドルブームでは松田聖子がいた。

 ではAKBにおいて、工藤のような存在になりそうなのは誰か。卒業してからの飛躍という意味で、似ている気がしたのは川栄李奈だ。女優としてのスキルはもとより、握手会での不運な事件を乗り越えた精神力は、トップクラスの芸能人となる可能性を充分に感じさせた。

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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