日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「ラグビーW杯が医療に与える影響」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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いよいよ、ラグビーワールドカップ2019日本大会が始まりましたね。ラグビーワールドカップは、4年に1度行われる15人制ラグビー世界王者決定戦。約7週間に渡り行われるラグビーワールドカップは、夏季オリンピック、FIFAワールドカップと並ぶ世界三大スポーツイベントの一つです。
ラグビーは1820年から30年頃に英国で始まったとされています。特に、1823年、英国の有名なパブリックスクールの一つであるラグビー校で、ウィリアム・ウェブ・エリスという少年がフットボールの試合中にボールを手に抱えたままゴール目指して走ったことが発祥といわれているようです。
アジア地域では初の開催であり、日本は9大会連続9回目の出場となるラグビーワールドカップには、大会参加国を中心とする世界中の国や地域から多くの観光客が日本に集まります。そして、試合会場やキャンプ地周辺へ人が集中するため、さまざまなトラブルや問題が発生することが考えられます。
そこで、今回はラグビーワールドカップ開催中に起こりうるであろう問題点を医療者の視点から3つ取り上げたいと思います。
ひとつ目は、感染症の発生・流行です。日本や海外でも流行を認めている麻疹(はしか)や風疹だけでなく、日本では冬に流行を認めるインフルエンザは、試合会場など人が密集するところではいつ感染が拡大してもおかしくありません。さらに、訪日される方が、やってくる国から疾患を持って来て広めてしまうというケースも十分考えられます。オーストラリアなど南半球の温帯地域では、インフルエンザは4~9月にかけて流行がピークを迎えるため、日本では例年流行期ではないインフルエンザも十分流行する可能性があるというわけです。