落合博満氏 (c)朝日新聞社
落合博満氏 (c)朝日新聞社

 令和の時代を迎えても尚、日本球界に多大な影響力を持っている人物が、落合博満氏である。史上唯一の3度の三冠王を達成した稀代の大打者。1998年に現役を引退すると、コーチを経験することなく2004年から2011年まで中日の監督を務め、その8年の間にチームをリーグ優勝4回、日本一1回に導いた。そして選手、監督時代から現在の解説者としての仕事も通じて他の追随を許さないのが、その“驚くべき慧眼”である。

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 2004年の監督就任1年目から異例だった。「補強なんかしなくても優勝しますよ」とトレード凍結を宣言するとともに、キャンプ初日から紅白戦を実施。最近になって早期の実戦練習はトレンドになっているが、当時は異例だった。それを「秋季キャンプでしたことがオフにゼロになってしまわないように、遊ばないような図式を作り出す」と落合監督は説明する。そして「優勝しますよ」の宣言通り、シーズンでは見事にリーグ優勝を果たして見せた。

 その後、「点を取られない野球」で中日の黄金時代を築き上げたが、その中で絶大な存在感を発揮していた荒木雅博、井端弘和の二遊間「アライバコンビ」に関しても、6年連続でゴールデングラブ賞を獲得した二人の守備位置を2010年に交換。井端の肩の衰えを見抜くとともに荒木のさらなる進化を促した点も、並外れた選手を「見抜く力」を持ってこそ成せる業だった。

 そしてその慧眼は、大谷翔平についても発揮された。高卒1年目の2013年のシーズン開幕前、今でこそほぼ全てのファン、識者が「二刀流」を認めているが、当時は懐疑的な声も多く、「プロは甘くない」、「どちらかに一本に専念すべき」との意見が大半だった。その中で、テレビの番組に出演した落合氏は、「みんな否定的なことを言っているけど、これほど話題性があって個性がある選手はいない。両方の魅力があり過ぎる。本人がやりたいんだったらやらせてやればいい。どちらか一本で行けと言うと、両方ダメになるよ」と持論を展開。結果的には日本で二刀流としての実績を作り、今や活躍の舞台をメジャーへと移している。

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