ここでも「要素還元主義」は間違っているということだ。砂糖入りのドリンクは(一般的に)体に悪いけど、砂糖入りのココアやチョコレートは体にいい。
砂糖の分子をつなげた炭水化物(デンプン)は「糖質」と呼ばれて糖質制限などではよくないものとされている。そして、ご飯1杯は角砂糖何個分の糖分が入っているからよくない、みたいな説明がなされることがある。
しかし、ご飯は角砂糖ではない。単にカロリーで換算して、このような安易なアナロジーで考えるのは正しくない。果物とフルーツジュースが違うように、これは悪しき「要素還元主義」と呼ぶべきだ。
とはいえ、糖質(炭水化物)は手放しで健康によいとはいえない。たとえば、白米のご飯食は糖尿病発症のリスクになる、という研究がある(Hu EA et al. BMJ. 2012 Mar 15;344:e1454)。たしかに、1日何百グラムも食べ続ければ糖尿病のリスクは(食べる量に応じて)増えていく。
しかし、この研究のデータによると、アジア人においては1日ご飯1杯位なら特に糖尿病のリスクを増やすとはいえなかった(厳密に言うと、この研究ではアジア人の少量ごはん食のデータがなかった。アジア人、ごはん好きですから)。
糖尿病の発症の仕方は西洋人と東洋人では違うと考えられている。ならば、西洋人のデータで白米と糖尿病の関係をわれわれに結びつけるのは、早計かも知れない。
この研究から得られた知見は、「ご飯ばかり食べていると糖尿病になりやすい(ただし西洋人は)」だ。いずれにしても、たまにちょっと食べるぶんには大きな問題にはならなそうだ。