好調・巨人を陰で支える敏腕スコアラーと、その存在が暗示するもろさ 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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好調・巨人を陰で支える敏腕スコアラーと、その存在が暗示するもろさ

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吉 元晴dot.
志田氏の任命がうまく機能している巨人・原監督 (c)朝日新聞社

志田氏の任命がうまく機能している巨人・原監督 (c)朝日新聞社

 巨人のここまでの戦いぶりに明暗・2つの顔が見える。最大の収穫は情報戦で天敵広島を圧倒していること。もう一つはチームのIT化に不安がある点だ。

 広島戦好調の殊勲者はスコアラーの志田宗大氏だ。昨年までチーム付きだった志田を原監督が広島戦限定のデータ分析マンに任命した。ストライクゾーンを4分割して、カウントによって次の投球の球種とコースと球速を味方打者にアドバイスする。打席で迷った打者は間違いなくこの球を狙う。

 野球は攻守が入れ替わるから、1試合のチェック項目は4万箇所に及ぶ大変な作業だ。フロントは志田の異動に反対したが、結果は明白だ。開幕3戦目、吉川尚輝に広島中崎の2球目のスライダー狙いを指示して決勝打になった場面。鹿児島でジョンソンの初球シュートを的中させ、ビヤヌエバに殊勲打が生まれたシーン、いずれも勝利につながった決定打だった。広島ベンチはなぜあの配球が読めたのか困惑していた。

 後藤孝志コーチも「確率を羅列するのではなく、分析結果を分かりやすく端的に表現してくるのが凄い」と絶賛する。「今年の広島戦の勝ち星の半分はあの人のお陰だね」とも断言した。志田は侍ジャパンの頭脳として小久保裕紀監督を支えた上に、ヤクルトのスコアラーでもあった。「丸が丸裸にされたら僕が裸にならないと」と、時々飛ばす意味不明の古典的なシャレも彼らしい。きっと正念場になるであろうヤクルトとの決戦でも貴重な存在になるだろう。

 だが、一人のスコアラーの才能がチーム成績を左右する現状は、これまでの体制に問題があったからだとも言える。

 巨人はオフの戦力補強に50億円を注ぎ込んだうえに、億単位の最新鋭の映像解析システムを導入している。資金力に貧しい広島から移籍した江藤智が「このチームは球場のあちこちに大金が落ちている」と驚いていたが、残念ながら高価な金品は揃っていても「豚に真珠」だったようだ。某スコアラーが試合中、スタンドからコーヒーカップ片手に降りて来て、模造紙に赤青鉛筆で乱雑に記した手書きの配球表をコーチに手渡してるのを見て唖然としたことがある。わずか3、4年前のことだ。

 楽天はすでに9年前に「戦略室」を導入してリーグ優勝に繋げ、DeNAにはスタンフォード大出身の統計学修士を筆頭に11人の「戦略部員」がフル稼働している。選手情報はメジャーリーグ球団と密接にリンクし、国際部が外国人選手を獲得する判断材料にもなる。一方、巨人に「データ分析室」が新設されたのは去年のことだ。分析の組織化という面において後れを取っている。巨人のIT化はまだもろい。(文・吉 元晴)


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