一方、言葉の遅れや知的な障害などを伴わないため、障害の程度が軽い人では、大人になってから診断に至るケースもあります。そのまま放置されると周囲の理解が得られず、Bさんのようにだんだんと居場所を失ってしまう可能性があります。結果として「自分はダメだ」と思って気分が落ち込んでしまったり、状況をうまく理解できずイライラしてしまったりと、新たな精神症状を引き起こすこともあります。そのような状況では、職場で周囲を巻き込んだ問題に発展してしまうこともあるかもしれません。

 では、切り出し方としてどのような方法があるのでしょうか。

 一つとして、アスペルガー症候群を持つ人は、周囲が感じている違和感を本人も自覚している可能性があげられます。

 アスペルガー症候群でみられるコミュニケーションの難しさは小さい頃から始まるとされています。家庭ではご両親やご親族の理解があって目立たないこともありますが、学校など集団生活では「空気読めないよね」「変わっている」と敬遠されてしまうこともあります。

 たとえ周囲からの批判を受けない場合でも、みんなが楽しいと思うことを共感できなかったり、言葉にしても何げなく当たり前と思うようなことが理解できなかったりと、うまく周りに溶け込めず悩んでしまうこともあるようです。

 もし、Bさんがアスペルガー症候群で同じような体験をされていたとしたら、ご本人も周囲が感じている違和感を自覚されているかもしれません。特に、入職のタイミングで問題になるケースでは、アスペルガー症候群の人が苦手とする不慣れな環境であったり、新しく覚えることも増えたりするため、どのように対処すればよいかわからず苦痛感を伴っていることがあります。そのような状況であれば「最近仕事どう? 困ったことない?」と聞いてみることで、案外「実は……」と話してくれるかもしれません。

 しかし、より難しいのはBさんが困っていない場合だと思います。他人の情緒を理解するのが苦手なアスペルガー症候群の人には、周囲が困っていることが伝わりにくいこともあります。このような状況では、一方だけが頑張りを求められる関係になってしまい周囲が疲弊してしまうかもしれません。そのため、状況が悪化し関係性が修復困難な状態になってしまう前に、どうにか困っていることを本人へ伝え対応していくことが必要になってきます。

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