「同じ日の丸を背負って戦いますけど、親善試合も負ければ悔しいですけど、重みが違いますよ。特に負けたら終わりの決勝トーナメントはね。その中で彼らが堂々とプレーしてくれたのは僕自身うれしかったし、これからのサッカー界を背負って日本サッカーのレベルを上げてくれるなって僕は確信しました」

 長友はさらに「親善試合はなかなか難しいですね。親善試合はアウェーでやりたいですよ。親善試合のホームでは、やっぱり結局、相手が手を明らかに抜いているし。特に強豪は抜いているし、そこで勝ったとしても何の意味も持たないんじゃないかと思いますね。アウェーで、厳しい環境でやって勝てて、自分たちの本当の意味での自信につながる」と切実に語った。

 その長友にキルギスが昨年11月のチームとまるで違っていたことについて意見を求めると「だから、もう、これですよ。本当に日本人は親善試合でも一生懸命やるんですけど、海外の選手って親善試合だと明らかに抜いていますよ」と回答してきた。

「特に強豪チームはね。明らかにテンションが違いますし、彼らが放つオーラは全く違うんでね。そこですよ。僕が親善試合を日本でやるのか、やっぱり自分自身はあまり好意的ではないと思いますね。海外でやらないと日本代表の本当の成長はないんじゃないかなと思いますね」

 当然ながら興業面を抜きに考えても、ワールドカップ後にアウェーマッチを立て続けに組んでいくのは新チームの立ち上げを考えても難しいし、UEFAネーションズリーグがスタートするなど、親善試合のマッチメークがかなり難しくなってきている。さしあたり今年は3月にコロンビア、ボリビアとホームで親善試合があり、6月にも親善試合が2試合組まれ、それからブラジルで行われるコパ・アメリカに向かう。コパが貴重な経験の場になることは間違いないが、ここから先を見据えた強化プランとして1つでも多くアウェーの試合を組んでいくことは実戦力を養うとともに、そうした環境で力を発揮できる選手を見極める意味でも重要になってくるはずだ。

 親善試合のマッチメイクというと強豪国であるほど良く思われがちだが、国の名前以上に試合の環境や相手のコンディション、モチベーションが強化にとって大事な要素だ。仮にキルギスが相手でも、ホームとアウェーでは戦いの厳しさがまったく違うだろう。欧州の強豪国などと親善試合を組むことは今後も難しいが、中堅国だろうと、あるいはアジアの国だろうと、できるだけアウェーの試合を組むことを求めたい。もちろんオフィシャルスポンサーの理解と協力が欠かせないが、何を優先するべきかを考えれば、それも乗り越えて行くべきハードルだろう。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。