最下位に沈んだ阪神・金本知憲前監督 (c)朝日新聞社
最下位に沈んだ阪神・金本知憲前監督 (c)朝日新聞社

 2018年のプロ野球ドラマがあった。セ・リーグでは圧倒的な強さでペナントレースを独走し、クライマックスシリーズでも貫禄を見せて問題なく日本シリーズまで進んだ広島。一方のパ・リーグは西武が独走したものの、王者ソフトバンクが“下剋上”で日本一への切符をつかみ、その頂点に挑む戦いでもビハインドからの4連勝で2連覇を成し遂げた。

 期待通り、あるいは期待以上の成果を残した球団や、今後につながるチームづくりが進んだ球団もあれば、収穫の乏しいシーズンを送ってしまった球団もある。その背景には選手の好不調、思わぬアクシデントや運といった要素もあるが、指揮官の手腕がもたらした影響もあるだろう。そこで今年1年を振り返り、全12球団監督の働きぶりを査定したい。今回はセ・リーグ編だ。

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【金本知憲(阪神)】 評価:E

 昨季2位から最下位に転落。残念ながら、褒めることのないシーズンだった。

 金本采配の最大の失敗は前年の良さを全く生かし切れなかったことだ。これは昨季の采配にも垣間見えたが、数試合の結果だけで選手を見限ってしまう。昨季ロッテを率いた伊東勤氏と似ていて、我慢しきれなかったことがチームの不安定さを引き起こした。

 このチームの命運を誰に託すのか。昨季2位だったにもかかわらず、どのようにチームを作っていくのかがバラバラになってしまっていた。2年間で金本知憲監督自身が試した多くの選手を信じてやれなかったのが、チームを崩壊に導いたと言えるだろう。

 昨季12勝を挙げた秋山拓巳、2012年ドラフト1位の藤浪晋太郎の不甲斐ない姿は、個人だけの問題ではなく、チーム内外の信頼を失墜させた象徴だった。

【森繁和(中日)】 評価:D

 6年連続Bクラスの責任は負わなければならないだろう。

 とはいえ、なかなか評価が難しい指揮官と言えるかもしれない。そもそも、チーム状況がどん底だった。なにせ、高卒3年目の若手が開幕投手を務めなければいけない状況は普通ではない。打線も昨季の本塁打王ゲレーロが巨人に移籍し、2年目のジンクスが危惧された京田陽太に期待しなければいけなかったのは指揮官だけの責任ではないだろう。

 ただ、その中でも、今季は途中から1番に定着した平田良介の復活を促し、大島洋平といい形を生み出した。長く伸び悩んできた高橋周平に使えるめどが立ち、今季から選手会長を務める福田永将も規定打席を初めてクリアした。育成を目指したシーズンという観点で見れば、合格点かもしれない。

 投手陣はベテランに頼りすぎた感はあるが、小笠原慎之介を含め、侍ジャパンにも選出された笠原祥太郎など若い投手に期待感はある。ブルペン陣も整備されつつあり、いいバトンを次に繋いだのではないか。

【アレックス・ラミレス( DeNA)】 評価:D 

 昨季の3位から順位を落とした。アレックス・ラミレス監督らしからぬシーズンだったという印象は拭えない。

 昨季ほどのおおらかな采配は見られず、選手の起用をこまめに変え、チームが安定しなかった。ロペスが離脱した穴を埋める補強の手を使わなかった編成部にも問題はあるが、迷走したシーズンだった。

 先発陣が働かなかったのも痛い。エースを務めるはずの今永昇太、石田健大、濱口遥大が揃って昨季の成績を下回った。これには、ルーキーイヤーからの登板が過多なのも一つの要因として挙げられるのかもしれない。今季も、東克樹がプロ初年度で同じような活躍を見せたが、若い投手の起用法は再考しなければならない。

 筒香嘉智のFA権取得が近づき、ロペスもそう長くチームにいる保証はないだろう。クローザーの山崎康晃の存在は一筋の光だが、どのようなチーム作りをしていくのか。日本シリーズに進出した昨季のような輝きを見せるのか、また暗黒時代に舞い戻るのか。来季はその分岐点になるかもしれない。

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