【高橋由伸(巨人)】 評価:C

 なんとか3位に滑り込んだシーズン後に辞任したが、高橋由伸監督の功績は開幕スタメンに岡本和真、吉川尚輝の二人の名前を書き込んだことだろう。吉川尚はシーズン中に故障で離脱してしまったが、ベテランをベンチに置いて、二人の名前をスタメン表に書き込んだメッセージはチームにとって大きかったはずだ。

 坂本勇人が円熟期に差し掛かってきている中で、彼と一緒になって戦う選手たちの高齢化が著しい。その中で、岡本が3割30本塁打100打点をクリア。4番という重責を与えながらの我慢強い采配は未来へとつながった。

 来季からは原辰徳監督が復帰する。日米野球のエキシビションゲームでは、若い選手たちが投打ともに躍動していた。高橋監督が撒いた種は近いうちに花を咲かせるのではないか。

【小川淳司(ヤクルト)】 評価:B

 ヤクルトは昨季のダントツ最下位から2位と躍進した。下馬評をひっくり返してのこの成績は小川淳司監督の手腕を再評価しなければいけない。
 
 昨季、リーグ最低だった打率が超回復。投手の防御率はやや回復という程度に収まったが、リーグ全体の投手陣の不調もあって撃ち合いを制することができた。交流戦での勝率1位はパ・リーグの強力打線と渡り合ってのことだから、自信にしていい。

 開幕当初は若手のホープ・廣岡大志を起用しながら、次第に中堅・ベテランの西浦直亨、大引啓次らの居場所を求めた。守備力のある西浦が戦力として計算できるようになったのは若手との競い合いが奏功した形だろう。

 ブルペン陣はシーズン途中から石山泰稚をクローザーに据えて、逆算した投手起用で勝利をもぎ取っていった。広島との対戦成績が来季への課題だが、優れたコーチングスタッフが充実しているだけに、さらなる飛躍を期待したい。

【緒方孝市(広島)】 評価:A

 日本シリーズで完敗したために印象は良くないが、セ・リーグ3連覇は褒められるべきだ。

 緒方孝市監督の優れているところは、圧倒的に勝ちながらでもしっかりと戦力の底上げを図っていることだ。

 松山竜平のような遅咲きタイプはその一人だが、野間峻祥はシーズン中に離脱した丸佳浩の穴を埋め、田中広輔、菊池涼介の調子が上がらない時には西川龍馬などを上位で起用している。目先の勝利を追いつつも、しっかりその先を見ているから戦力に厚みが出てくるのだ。

 投手陣も、昨季ブレークした薮田和樹、野村祐輔が成績を落とす中、大瀬良大地、九里亜蓮らが存在感を見せつけた。岡田明丈、中村祐太らは最終的にはローテーションを外されたものの、来季へ期待を持て、ブルペンで活躍した2年目のアドゥワ誠など若手も頭角を現している。

 ただ、3連覇を果たしながら、日本シリーズではソフトバンクに完膚なきまでにやられた。セ・リーグを勝ち抜く戦い方だけでは日本一にはなれない。ペナントレースでの戦いが切羽詰まっていない中でのチーム作りは簡単ではないが、セ・パの実力差の穴をどう埋めていくか。指揮官に課せられた役割は大きい。
(文・氏原英明)

●プロフィール
氏原英明
1977年、サンパウロ生まれ奈良育ち。地方新聞社勤務を経て、03年からフリーライター。夏の甲子園は03年から大会をすべて観戦取材するなど、アマチュア野球に精通。現在のプロ野球選手のアマチュア時代を知る強さを生かし、プロの現場でも成長ぶりを追いかける。一方、最近では個性がどう生かされているかをプロアマを問わず観戦の主眼に置いている。近著には「甲子園という病」 (新潮新書)がある。